特定技能雇用契約が満たすべき基準
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人材を採用する際には企業と人材との間で契約を結びますが、特定技能人材との契約には”特定技能雇用契約”という契約が用いられます。聞きなれない言葉であるうえ、通常の雇用契約との違いがあまり想像つかない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、”特定技能雇用契約”について詳しく、分かりやすく説明していきます。契約は企業と特定技能人材の双方にとって非常に重要なプロセスとなりますので、この記事を通して正しい知識を学びましょう!
特定技能雇用契約とは
“特定技能雇用契約”とは簡単に言うと、特定技能外国人材と人材を受け入れる企業との間で結ばれる雇用契約のことを指します。
“特定技能雇用契約”はビザ申請などの前に締結する必要があり、特定技能外国人が行う活動の内容やこれに対する報酬、その他の雇用関係に関する事項のほか、特定技能雇用契約の期間が満了した外国人の出国を確保するための措置、また当該外国人の適正な在留に資するために必要な事項が適切に定められているものとして、特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令で定める基準に適合するものでなければなりません。22
詳しい内容については次項で説明しますが、難しく感じる必要はありません。
私達日本人も企業で働く際には雇用契約を結ぶ必要が生じますよね。”特定技能雇用契約”は形としてはそれとなんら変わりはないのです。但し、”特定技能雇用契約”において雇用契約の内容に関しては注意すべき点がいくつかありますので詳しく見ていきましょう。
特定技能雇用契約の内容
①従事させる業務に関するもの
1号特定技能外国人については、“相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能として分野別運用方針及び分野別運用要領で定める水準を満たす技能を要する業務に従事させるものでなければならない“と定められており、2号特定技能外国人については、“熟練した技能として分野別運用方針及び分野別運用要領で定める水準を満たす技能を要する業務に従事させるものでなければならない“と定められています。
つまり、特定技能人材は既に一定の技能を持っている者と考えるため、日本に来てからの仕事に関しても、その技能に見合う内容である必要があります。
②所定労働時間に関するもの
特定技能外国人の所定労働時間は、特定技能所属機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等でなければなりません。
外国人であるからといって、日本人労働者以上に働かせることや不当な残業を課すことは禁止されています。そのため、所定労働時間に関して受入れ企業はそうした不当な扱いをとらないという内容を示す必要があります。
③報酬等に関するもの
特定技能外国人の報酬の額は同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上でなければなりません。
これは最低賃金さえ払えばいいという認識ではいけませんということです。例えばある特定技能外国人と同等の業務を行う日本人への報酬が最低賃金+1000円である場合には、当該特定技能人への報酬も最低賃金+1000円である必要があります。
特定技能外国人と同等の業務を行う日本人労働者がいない場合、会社規定があればそれに従い内容を提示しますが、会社規定がなければ、特定技能外国人が行う業務レベルに最も近しい業務を行う日本人労働者への報酬を参考に報酬を決定、内容を提示します。
④差別的な扱いの禁止に関するもの
外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設(社員住宅、診療施設、保養所、体育館など)の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをするようなことはあってはなりません。
受入れ企業はしっかりと特定技能外国人に対し、差別をしない旨の内容を提示する必要があります。
⑤一時帰国のための有給休暇取得に関するもの
特定技能外国人は、有休を使い母国へ一時帰国する権利を有します。そのため受入れ企業は、特定技能外国人から一時帰国の申出があった場合は、業務上やむを得ない事情がある場合を除き、何らかの有給の休暇を取得することができるよう配慮するという旨の内容を提示する必要があります。
例えば、既に労働基準法上の年次有給休暇を全て取得した特定技能外国人から、一時帰国を希望する申出があった場合にも、追加的な有給休暇の取得や無給休暇を取得することができるよう配慮することが望まれます。
⑥派遣先に関するもの
特定技能外国人を労働者派遣法又は船員職業安定法に基づき派遣労働者として雇用する場合は、当該外国人の派遣先及び派遣の期間が定められています。
現在は、”農業分野”と”漁業分野”においてのみ、派遣雇用が認められていることは留意点です。
⑦帰国担保措置に関するもの
特定技能外国人が特定技能雇用契約の終了後に帰国する際の帰国費用については本人負担が原則となりますが、当該外国人がその帰国費用を負担することができない場合には受入れ企業側が帰国費用を負担する必要があります。
受入れ企業は特定技能外国人の出国が円滑になされるよう必要な措置を講じなければなりません。
⑧健康状況その他の生活状況把握のための必要な措置に関するもの
特定技能外国人が安定して日本で就労活動を行うことができるよう、当該外国人の健康状況やその他の生活状況を把握するために必要な措置を講じる必要があります。
例えば、特定技能外国人が健康に働き続けられるように定期的な健康診断を行うことが必要です。
⑨分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの
特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。
特定技能外国人はそれぞれの業種で定められている基準を満たしている必要があります。
特定技能雇用契約が満たすべき基準のまとめ
特定技能雇用契約が満たすべき基準のまとめです。最低限、以下の項目を盛り込むようにしましょう。
①分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
②所定労働時間が、同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
③報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること
④外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと
⑤一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
⑥労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められていること
⑦外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること
⑧受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずること
⑨分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
特定技能雇用契約書の雛形
特定技能雇用契約書の雛形です。特定技能雇用契約書を作成する際の参考にお使いください。
http://www.moj.go.jp/content/001315312.pdf
まとめ
いかがでしたか。内容をひとつひとつ見ていくと、想像より簡単に理解できたのではないでしょうか。採用後、特定技能外国人と受入れ企業間で雇用に関する認識の差異が生じることを防ぐためにも、本ページで挙げた9つのポイントを抑え、特定技能雇用契約書の作成に役立ててくださいね!
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