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特定技能外国人募集・採用する際に気をつけるべきこととは?行政書士が法律面から説明、例も挙げられます!➁

多様性と平等は、現代の労働市場において極めて重要な価値です。特定技能外国人特定技能者の募集・採用においては、公平かつ平等な雇用機会を提供し、多様なバックグラウンドを持つ個人が尊重される環境を築くことが求められます。前回の記事で年齢制限が禁止されていることを紹介しましたが、今回は男女の差別、間接差別禁止に焦点を当てたポイントを紹介いたします。

関連記事:特定技能外国人を募集・採用する際に気をつけるべきこととは?行政書士が法律面から説明、例も挙げられます!➀

募集の際に男女の差別、間接差別禁止の例

男女雇用機会均等法は、労働者の募集及び採用に係る性別を理由とする差別を禁止し、男女均等な取り扱いを求めています(第5条)。

また、業務上の必要性など、合理的な理由がない場合に、募集・採用において労働者の身長・体重・体力を要件とすること、労働者の募集・採用、昇進、職種を変更する際に、転居を伴う転勤に応じることを要件とすることは、間接差別として禁止されています(第7条)。

出典:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

① 「男性又は女性を採用しない」などの方針で採用計画を立てるのは違法です。

× 男性に幹部候補として基幹業務を担当させ、女性に補助業務を担当させる。
× 事務職に女性のみ、営業職に男性のみを採用する。
× 総合職は男性を7名、女性を3名など、男女別の採用人数を決めて採用する。
× 一般職について女性のみを採用する。

② 男性のみ又は女性のみを対象として募集するのは違法です。

× 女性経理職員が退職したため、後任に女性を募集する。
× 男女を対象とした募集であっても、男性又は女性のみを採用する目的で、募集要項を男子校又は女子高に限って配布する。

③ 業務に必要ないのに「一定の身長・体重・体力があること」を要件にするのは違法です。

× 荷物を運搬する業務の募集で、既に運搬するための設備や機械が導入されていて、実際の業務を行う上では筋力は必要ないのに、一定以上の筋力があることを要件とする。
× 単なる出入り者のチェックを行う警備員であるのに、身長又は体重が一定以上であることを募集の要件とする。

④ 募集要項や就職情報誌の求人情報等について、男女のいずれかを表す名称で募集職種を表示したり、男女のいずれかを優遇しているような表現は違法です。

× ウエイトレス、〇〇レディ、スチュワーデス、看護婦、保母さん
× 「経験不問! 求む。ガッツある男」「女性ならではのお仕事」

⑤ 会社説明会やセミナーの実施に当たり男女で異なる取り扱いをするのは違法です。

× 会社説明会等の実施日を男女別に設け、実施場所を変える、配布資料を変える。
× 男女のいずれかに対してのみ追加的な説明を行う。

⑥ 面接における質問等について、男女で異なる取り扱いをするのは違法です。

× 女性にだけ子供が生まれた場合の就業継続意思を質問する、男性にだけ幹部候補となる意欲を聞く。
× 面接時に、男女に同じ内容の質問をしていても、男女いずれかを採用する目的で、一方の性についてのみその返答を採用・不採用の判断要素とする。

男女で異なる取り扱いをすることが法違反とはならない場合

一方で、男女で異なる取り扱いをすることが法違反とはならない場合があります。

① 業務の遂行上、一方の性でなければならない職務の場合には、法違反にはなりません。

〇 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務。
〇 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務。
〇 宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上、その他の業務の性質上、男女のいずれかのみに従事させることについて必要性があると認められる職務。
  ※ 法違反とならないかどうかは個別具体的に判断されるので、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。

② 労働基準法等法令の規定により男女均等に就業させることができない職務があります。

〇 深夜業(労働基準法第61条第1項)、坑内業務(同第64条の2)、危険有害業務(同第64条の3第2項)には男性を従事させる必要があります。
〇 助産師(保健師助産師看護師法第3条)は女性でなければなりません。

③ 女性労働者に対する過去の取り扱いが原因で男女間に大きな格差が生じている状況を改善するために、女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う措置(ポジティブ・アクション)を取ることは法違反とはなりません。

〇 女性の数が男性の4割未満である雇用管理区分や役職における募集及び採用に当たって、男性より女性を優先して採用する。
 ※ 雇用管理区分とは、「正社員・契約社員・パート社員」、「総合職・一般職」、「事務職・営業職・技術職」といった分け方で、職務や異動の有無、昇進の仕方などに違いを設けること。

まとめ

募集・採用選考に当たっては、応募者の基本的人権を尊重することを基本に、応募者に広く門戸を開き、応募者の適性・能力のみを基準として採用選考を行うことが重要とされています。

従って、年齢制限や男女差別の禁止以外にも、本人には責任のない事柄(出生地、家族の学歴や収入、居住地の環境など)を面接時に尋ねたり、本来自由である事柄(宗教、支持政党、人生観など)を作文に書かせたりして把握することは就職差別につながる恐れがあるとされ、避けなければなりません。


水本 智

雇用契約書、就業規則などの整備を中心とした労務トラブル回避型の社会保険労務士。東京都社会保険労務士会所属。

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