在留資格「特定技能」のかんたんな説明
- 特定技能
2019年4月より、在留資格「特定技能」が始まりました。
在留資格「特定技能」に関する制度が正しく理解され、適正に運用されるよう、出入国在留管理庁から「特定技能外国人受入れに関する運用要領」が出されています。
運用要領には、法令の解説や、制度を運用するにあたっての注意点が書かれています。
この記事では、運用要領に基づいて、在留資格「特定技能」に関する制度を簡単に解説していきます。
・外部リンク
出入国在留管理庁『特定技能外国人受入れに関する運用要領(2020.4.1更新)』
http://www.moj.go.jp/content/001315380.pdf
在留資格「特定技能」はどうして始まったの?
まず初めに、在留資格の「特定技能」が始まった理由を説明します。
背景にある日本の働き手不足の問題
在留資格「特定技能」が始まった背景として、日本の人口不足の問題があります。
特に、日本の経済を維持するための働き手となる15歳以上65歳未満の生産年齢人口は、1968年の人口動態調査開始以来、初めて全体の6割を下回るなど、明らかに年々減少しています。
この問題の対策として、国は「生産性向上の取り組み」「国内人材確保の取り組み」などを行っています。
しかし、これらの取り組みを行っても、深刻な働き手不足に悩む産業や事業者は数多くいるのが現状です。
そこで、深刻な働き手不足に悩む一部の限られた産業に向け、「国外人材確保の取り組み」が新たに始まりました。
在留資格「特定技能」は、「国外人材確保の取り組み」のうちの一つの取り組みとして始まりました。
特定技能とは?
在留資格「特定技能」は、一定の専門性・技能を既に持っており、即戦力となる外国人を受け入れる新しい仕組みです。
外食業や建設業などをはじめとした深刻な人手不足の課題を抱える一部産業を対象として成り立っています。
これまで外食業や宿泊業などで外国人を店舗の現場スタッフとして採用したい場合、労働時間が週28hに限定されたアルバイトとしてでしか採用できませんでした。
今回の在留資格「特定技能」の導入により、日本人のフルタイムで働くスタッフと同じ時間働けるといった利点があります。
在留資格「特定技能」で外国人を受け入れることができる14の業種
外国人が在留資格「特定技能」を使ってできる仕事は一部の産業分野に限られています。
在留資格「特定技能」で受け入れられるのは、以下の14業種です。
自社の業種や実際の業務内容と合致すると、在留資格「特定技能」で外国人を受入れ、働いてもらうことが可能になります。
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家族帯同や、在留期間が5年以上認められる「特定技能2号」での受入れは、「建設分野」「造船・舶用工業分野」の2つのみに限られています。
在留資格「特定技能」の1号・2号ってなに?
外国人材に求められる技能の水準
在留資格「特定技能」には2種類あり、それぞれ「特定技能1号」・「特定技能2号」といいます。
「特定技能1号」・「特定技能2号」の違いは、ビザを取得するために必要な技能水準や在留期間の違いです。
「特定技能1号」より「特定技能2号」の方が、より難しく、高度な技能を身に着けていることが求められます。
すなわち、「特定技能2号」を取得した外国人は、「特定技能1号」よりも高い技能水準の業務を担当することができます。
また「特定技能1号」を取得した外国人のことを「1号特定技能外国人」といい、「特定技能2号」を取得した「2号特定技能外国人」といいます。
詳細な比較は以下の通りです。
特定技能1号
特定技能1号を取得する外国人に求められる「技能水準」について説明します。
運用要領では「相当期間の実務経験等を要する技能」とされており、「特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準」の業務と説明されております。
実際には、各業種ごとに技能水準を満たすかを判断する試験があり、合否によって外国人が技能水準を満たすか判断がされます。この試験を「特定技能1号技能測定試験」といいます。
技能水準は、業種により具体的な技能が異なるので、試験も分野ごとに異なるものが用意されています。
在留資格「特定技能」を取得するためには、外国人は原則として業界ごとの「技能測定試験」に合格する必要があります。
なお、同分野の技能実習2号を良好に修了している外国人は、十分な技能水準を備えていると考えられるので、試験の免除がされます。
また、日本語能力についても技能水準を判断する試験があります。外国人は在留資格「特定技能」を取得するために、一定レベルの試験に合格していなければビザの申請をすることができません。
試験は2種類あり、日本国内で開催されている「日本語能力試験(JLPT)」と国外で開催されている「JFT-basic 国際交流基金日本語基礎テスト」があります。
なお、技能実習2号を良好に修了している外国人に関しては、修了した技能実習の分野に関わらず十分な技能水準を備えていると考えられることから、これらの「日本語能力試験(JLPT)」や「JFT-basic 国際交流基金日本語基礎テスト」による試験を免除することが可能です。
特定技能2号
特定技能2号を取得する外国人に求められる技能水準を説明します。
特定技能2号を取得した外国人は、特定技能1号を取得した外国人よりも高い技能水準の業務を担当することができます。
こちらも特定技能1号と同様に受け入れる分野によって具体的な技能は異なります。運用要領では「熟練した技能」とされており「長年の実務経験等により身に着けた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同と又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技術」と説明されています。
たとえば、高度に専門的・技術的な技能においても外国人が自ら判断して業務を行うことができたり、熟練した技能を用いて業務を行うことができる、などの技能水準です。
特定技能2号による外国人の受入れが可能となるのは、現在「建設分野」と「造船・舶用工業分野」の2分野に限られています。
「特定技能1号」を取得する条件
特定技能1号を取得するための主な条件は以下の通りです。
特定技能1号技能測定試験
各業種ごとに求められる技能水準を満たすかを判断するための試験があります。
外国人が在留資格「特定技能」を取得するためには、原則として分野ごとの「技能測定試験」に合格する必要があります。
技能水準は、分野により具体的な技能が異なりますので、試験も分野ごとに異なるものが用意されています。
なお、同分野の技能実習2号を良好に修了している外国人は、十分な技能水準を備えていると考えられるので、試験の免除がされます。
「技能実習2号を良好に修了している外国人」には、技能実習法施行前の技能実習2号を修了した技能実習生や、在留資格「技能実習」が創設される前の「特定活動」(技能実習)をもって在留していた技能実習生(「研修」及び「特定活動」で在留した期間が2年10か月以上の者に限る。)も含まれます。
日本語能力試験
日本語能力についても技能水準を判断するための試験があります。
試験は2種類あり、日本国内で開催されている「日本語能力試験(JLPT)」と国外で開催されている「JFT-basic 国際交流基金日本語基礎テスト」です。
外国人が在留資格「特定技能」を取得するためには、原則として「日本語能力試験(JLPT)」又は「日本語能力試験」のどちらかで一定水準以上のレベルに合格する必要があります。
「日本語能力試験(JLPT)」の場合は、N1(ビジネスレベル)~N5(基礎レベル)の5つのレベルがあり、特定技能を取得するためには、N4以上(日常会話レベル)に合格する必要があります。
「JFT-basic 国際交流基金日本語基礎テスト」の場合は、レベルは1つですので試験に合格すれば能力水準を満たすことになります。
なお、技能実習2号を良好に修了している外国人に関しては、十分な技能水準を備えていると考えられることから、これらの「日本語能力試験(JLPT)」や「JFT-basic 国際交流基金日本語基礎テスト」による試験を免除することが可能です。
修了した技能実習の職種・作業の種類にかかわらず免除となります。
ただし、介護分野においては異なる日本語評価試験を実施しているため、介護職種・ 介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除き、試験が免除されないことに注意が必要です。
「技能実習2号を良好に修了している外国人」には、技能実習法施行前の技能実習2号を修了した技能実習生や、在留資格「技能実習」が創設される前の「特定活動」(技能実習)をもって在留していた技能実習生(「研修」及び「特定活動」で在留した期間が2年10か月以上の者に限る。)も含まれます。
年齢制限
在留資格を取得する外国人が、日本に上陸する時点で18歳以上である必要があります。
理由は日本の労働法制上,18歳未満の労働者に関し,特別の保護規定を定めているためです。
なお、在留資格の交付申請をする際には18歳未満でも手続きは可能です。
健康状態について
日本での就労活動を安定的かつ継続的に行っていただく観点等から、外国人の健康状態が良好であることが求められます。
健康状態を確認する方法は、病院での健康診断です。
在留資格の交付申請をする際に、健康診断の結果を提出する必要があります。
退去強制令書の円滑な執行への協力に関するもの
退去強制令書が発付されている外国人や、退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域の外国人の受入れは認めらておりません。
通算在留期間に関するもの
「特定技能1号」で在留できる期間は通算で5年間です。5年を過ぎて滞在することはできません。
保証金の徴収・違約金契約等に関するもの
特定技能の適正な活動を妨げるため、特定技能外国人本人やその親族等が、保証金の徴収や財産の管理又は違約金契約を 締結させられることがないことが求められます。
費用負担の合意に関するもの
外国人が来日のために不当に高額な費用を支払わされていたり、多額の借金を抱えて来日するといったことを防ぐため、外国人が入国前及び在留中に負担する費用について、金額及び内訳を十分に理解し、合意していることが求められます。
また費用の徴収にあたっては、各国の法制に従って適法に行われることが前提となります。
本国において遵守すべき手続に関するもの
外国人が、在留資格「特定技能」を取得して来日するにあたり、本国において必要な手続を遵守していることが求められます。
分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの
特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。
どんな人が特定技能を取得するの?
総務省によると、2020年2月時点で特定技能1号を使って日本で働いている外国人は2,994人です。
在留資格「特定技能」の制度が始まった2019年4月から徐々に人数が増加していることが、わかっています。
在留資格「特定技能」を取得する人が多くいる、2つのパターンを紹介します。
「技能実習2号」からの在留資格変更
1つ目は、技能実習2号を修了した後、在留資格を「技能実習」から「特定技能」に変更する人です。
技能実習2号を修了すると、技能実習と同じ分野で在留資格「特定技能」を取得することができます。
技能実習2号を修了するためには3年間の実習が必要です。この実習機関で身に着けた技術や、日本で実際に働いた経験をいかし、より難しい業務を担当することができます。
「留学」からの在留資格変更
日本の大学や日本語学校に留学生として学びに来ており、学校を卒業した後に特定技能で就職をする人です。学生として日本語を学ぶ機会にも恵まれています。またほとんどの留学生は、留学期間中に日本の会社でアルバイトとして働いた経験があり、学生ながらも飲食店での接客や、日本語を使った業務経験が豊富です。
まとめ
日本の人手不足の問題は今後さらに深刻になることが予想されています。
在留資格「特定技能」の新設は、人手不足の課題解消に繋がることが期待されます。
また、在留資格「特定技能」が新設されたことにより、外国籍の方が日本で働く機会が増えています。日本にとっても大きな転換点となるのではないでしょうか。