特定技能「介護」に関する助成金・補助金はある?具体的な事例を調査!
介護分野において、特定技能人材を採用する場合、一定のコストが発生します。少しでもコストを削減したいと考える人事担当者の方もいることでしょう。
補助金・助成金制度を活用すればコストを削減できる可能性があります。介護分野の特定技能人材の導入に際して、活用できる補助金・助成金制度はあるのでしょうか。
今回は、特定技能「介護」に関する補助金・助成金制度について解説していきます。
目次
特定技能「介護」専用の助成金・補助金制度はある?
特定技能制度は、日本の人手不足に対応するために、人材確保が困難な産業分野において外国人を受け入れる仕組みです。そのため、特定技能人材は介護分野だけでなく、ビルクリーニング分野や農業分野、外食業分野など、さまざまな業界で活用されています。
補助金制度に関しては、特定技能「介護」人材だけのために用意された制度は見受けられませんでした。
ただ、特定技能制度で外国人を雇用するときの助成金、特定技能人材や技能実習生、留学生などの受入に活用できる補助金などは見受けられました。
特定技能「介護」人材の受け入れを検討している方は、介護分野や特定技能人材というキーワードにこだわらず、助成金や補助金を探してみるとよいかもしれません。
特定技能人材の雇用 に関する助成金
特定技能人材の雇用で活用できる助成金として、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)が挙げられます。
人材確保等支援助成金の対象経費
人材確保等支援助成金の対象経費は下記の通りです。
・通訳にかかる費用
・翻訳機器を導入するための費用
・翻訳にかかる費用
・弁護士や社会保険労務士などへの委託料
・社内標識類の設置や改修にかかった費用
人材確保等支援助成金の受給要件
受給要件は下記の通りです。
・外国人労働者を雇っている事業主
・認定された就労環境整備計画にもとづき、外国人労働者に向けた就労環境整備措置を導入し、外国人労働者に実施
・就労環境整備計画期間が終了してから一定期間経過後において、外国人労働者の離職率が10%以下である
ちなみに、就労環境整備措置として必ず講じなければならないのが、雇用労務責任者の選任と、就業規則等における社内規定の多言語化です。
加えて、苦情・相談体制の整備や一時帰国をふまえた休暇制度、社内マニュアル・標識類等の多言語化の中から、いずれかの措置も講じる必要があります。
人材確保等支援助成金の受給額
対象事業主が対象措置を講じた場合、支給対象経費の合計額に助成率をかけた金額が支給されます。
生産性要件を満たしていない場合は、支給額が支給対象経費の1/2であり、上限額は57万円です。生産性要件を満たしている場合は、支給額が支給対象経費の2/3であり、上限額は72万円です。
生産性要件とは、助成金を申請する事業所に対して、助成の割増を行う際の基準です。
参考:人材確保等支援助成金 外国人労働者就労環境整備助成コース(厚生労働省)
特定技能「介護」に関する補助金➀:埼玉県
埼玉県では、外国人のための環境整備事業補助金制度を提供していました。
埼玉県の介護施設などが、特定技能外国人をはじめ介護福祉士を目指す留学生や技能実習生などを受け入れたとき、日本語習得費や居住費の一部を補助してくれる制度です。
外国人のための環境整備事業の対象経費
外国人のための環境整備事業補助金の対象経費は下記の通りです。
・留学生が在籍する日本語学校の学費で受入事業者が支払った経費
・留学生の居住費として受入事業者が支払った経費
・留学生に対して受入事業者が居住費の支払いを免除した経費
・技能実習生の日本語学習のために受入事業者が支払った経費
・技能実習生の居住費として受入事業者が支払った経費
・技能実習生に対して受入事業者が居住費の支払いを免除した経費
・特定技能外国人の日本語学習のために受入事業者が支払った経費
外国人のための環境整備事業の補助額
対象経費 | 補助額 | 補助率 |
授業料や入学金、そのほか知事が必要と定めた経費 | 年額60万円 | 1/3 |
受入施設が留学生の居住に対して支払っている賃借料 | 月額3万円 | 1/3 |
報償費、人件費、旅費、需用費、役務費、使用料、委託料、補助金 | 年額23万5千円 | 10/10 |
受入施設が技能実習生の居住に対して支払っている賃借料 | 月額3万円 | 1/3 |
参考:埼玉県外国人のための環境整備事業補助金交付要綱(埼玉県)
特定技能「介護」に関する補助金➁:藤沢市
藤沢市では、特定技能外国人を介護従事者として雇用する市内の介護事業所に対して、補助金制度を提供しています。
外国人留学生や、EPAにもとづく外国人介護福祉士候補者、外国人技能実習生なども対象です。
外国人介護職員受入支援事業の対象経費
居住費に関しては事業所が負担した経費です。敷金や礼金は除かれ、ルームシェアに関しては人数で按分します。
生活必需品に関しては、外国人の受け入れにあたって事業所が負担した経費です。具体的には、消耗品費や教材費、備品購入費などです。市長によって認められた経費でなくてはなりません。
ちなみに、消費税や地方消費税は除かれています。
外国人介護職員受入支援事業の補助額
居住費に関しては、1人あたりの上限は月額1万円です。対象経費について1人あたり月額3万円を上回るケースを対象としています。
生活必需品に関しては、1人あたりの上限が5万円です。1度限りに制限されています。
特定技能「介護」に関する補助金➂:船橋市
船橋市では、外国人介護職員をはじめ受入施設の職員に対する研修実施費用等について助成する補助金制度の取り組みを始めています。
補助金の名称は「船橋市外国人介護人材受入支援事業補助金」です。補助の対象者は、社会福祉法人や公益社団法人、特定非営利活動法人などです。
補助対象事業の一つとして、介護分野の1号特定技能外国人を対象にする集合研修事業が挙げられています。
船橋市外国人介護人材受入支援事業の対象経費
介護分野の1号特定技能外国人を対象とする集合研修事業を行う場合、補助対象の経費は主に下記の通りです。
・給料
・職員手当等
・報酬
・共済費
・報償費
・旅費
・消耗品費
・燃料費
・食糧費
・印刷製本費
・光熱水費
・会議費
・雑役務費
・通信運搬費
・手数料
・広告料
・保険料
・使用料
・賃借料
・委託料
・備品購入費
・そのほか市長が必要だと認めた費用
船橋市外国人介護人材受入支援事業の補助額
介護分野の1号特定技能外国人を対象とする集合研修事業を行う場合、補助基準額は1事業者あたり100万円です。
なお、研修受講者のうち優秀だと認められた人物、あるいは一定の介護スキルと日本語力を持つ人物は、1人1回までキャリアアップ支援事業で助成を受けられます。具体的には、介護職員としてのステップアップを目的とした研修費用に関する助成です。
その場合の補助基準額は、1人あたり5万円に実受講者数を掛けた金額となっています。
参考:船橋市外国人介護人材受入支援事業補助金について(船橋市)
まとめ
以上、介護分野の特定技能人材に関する助成金や補助金を紹介しました。助成金や補助金の実施は流動的で、気づかないうちに申込みの受付が終了してしまうケースがあります。介護分野で特定技能外国人を採用するとき、便利な制度を活用できずに損をしてしまうかもしれません。 これから介護分野で特定技能外国人の雇用を検討している人事担当者の方は、助成金や補助金の動向にまで注目しておくようにしましょ