【2021年最新】技能実習生の賃金給与状況は?年金・保険・雇用維持支援なども解説!
- 技能実習
外国人技能実習生制度では、技能実習生に対する報酬を日本人と同等以上に確保することが定められています。その点、技能実習生の給与の現状が気になっている方も多いのではないでしょうか。今回は、外国人技能実習制度の概要をおさらいしつつ、技能実習生の給与に関する事柄を解説していきます。新型コロナの影響をふまえた技能実習生に対する雇用維持支援制度にも触れているので、必要に応じて参考にしてみてください。
外国人技能実習制度とは
外国人技能実習制度とは、開発途上国の人材に母国では獲得できない技能を習得してもらう制度です。
目的は、日本で培われた技能・技術・知識を外国人と共有し、人材教育によって開発途上地域の経済発展に寄与することです。
技能実習法の基本理念では、技能実習の目的は労働力の需給調整手段ではないことが明記されています。
平成29年度11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行され、外国人技能実習制度の対象職種に介護職が加わりました。
技能実習生を受け入れる際に必ず知っておくべきなのが給与や労働時間のルールです。
最低賃金法によると、技能実習生の給与支払いについては、最低賃金額以上にしなければなりません。また、労働基準法によると技能実習生の労働時間については、原則として1週間あたり40時間(1日8時間)を超えないように制限が課せられています。
外国人技能実習生の現状
全国における技能実習生の推移は下記の通りです。
年度
人数
令和元年10月
383,978人
平成30年10月
308,489人
平成29年10月
257,788人
前年同期比は、平成30年が19.7%、令和元年が24.5%です。年々にわたって外国人技能実習生が加速的に増加していることがわかります。
技能実習生の増加にともない、制度実施の課題も浮き彫りとなっています。
令和元年、関東地域の労働基準監督機関では、実習実施機関に対して2,042件の監督指導が実施され、そのうち1,498件で労働基準関係法令違反が認められました。主な違反事項は、労働時間や賃金台帳、割増賃金に関する内容が上位です。
たとえば、実際に労働した時間に対する賃金が支払われていなかった事例がありました。技能実習生を受け入れる場合、労働時間や賃金に関するトラブルが生じないように注意が必要です。
参考:外国人技能実習制度の現状、課題等について(厚生労働省)
【2021年】外国人技能実習生の給与(賃金)状況
令和2年における技能実習で働く外国人労働者の平均賃金は、16万1,700円となっています。平均年齢は27.1歳で、平均勤続年数は1.7年です。
対前年増減率は2.5%であり、若干金額に増加傾向が見受けられました。外国人労働者全体の平均賃金は21万8,100円であり、技能実習で働く場合より5万円ほど高い結果となっています。
同じ年齢層の日本人との間で給料を比べてみましょう。令和2年における25~29歳の正社員男女の賃金は、24万9,600円となっています。技能実習で働く場合よりも8万5,000円ほど高い結果です。
技能実習生は、日本人よりも低賃金で働いているのが実情のようです。
雇用形態、性、年齢階級別賃金及び雇用形態間賃金格差(厚生労働省)外国人技能実習生の給与に対する希望
リフト株式会社は、日本における技能実習生の就労延長希望に関する調査を令和2年9月に実施しました。
「延長する場合、どの程度の手取り金額を希望するか?」との質問に対する結果として、22万円程度(21.5%)、20万円程度(20.9%)などの回答が上位を占めていました。ちなみに、22万円程度以上(39.3%)と回答された割合がトップになっています。
また、就労延長を希望しない技能実習生に対して「どのような条件をクリアすれば延長を希望するのか?」という質問が行われたところ、親の許可が得られる(47.4%)、給料が上がる(26.3%)との回答が上位を占めていました。
以上の結果をふまえると、技能実習生が帰国せずに日本で前向きに働いてもらうには、受け入れ先が給与に関する待遇を慎重に配慮しなければならないことがわかります。
参考:【技能実習生アンケート企画】希望する給与額は?特定技能への切り替えは?(リフト株式会社)
外国人技能実習生の年金・保険
技能実習生も日本人と同様に障害や死亡のリスクがあります。万が一の事態に陥れば、本人だけでなく家族の生活も崩れてしまいかねません。その点、技能実習生も公的年金制度に加入する必要があります。
厚生年金保険の適用事業所であれば、厚生年金保険への加入義務があります。この場合、事業主が加入手続きを実施しなければなりません。
厚生年金保険の適用事業所でなければ、国民年金保険への加入義務があります。この場合、技能実習生が自分で加入手続きを実施しなければなりません。
そのほか、義務ではない任意加入の保険も存在しています。たとえば、「外国人技能実習生総合保険」です。事故によるケガや病気の発病を補償する保険であり、万が一のケースに治療費用保険金や死亡・後遺障害保険金、賠償責任保険金などが支払われます。
年金制度に関する注意点
技能実習生は、日本人とは異なる制度として脱退一時金の仕組みを利用できます。脱退一時金とは、日本の公的年金制度から抜けるときに受け取れるお金です。
ただし一時金を受け取るには、帰国から2年以内に請求しなければなりません。また、年金加入期間が半年以上であることや、障害年金を受け取っていないことも条件とされています。
また、日本で公的年金制度に10年以上加入したときや社会保障協定の対象になるときなど、一定条件を満たしていると老齢年金を受け取れます。しかし、脱退一時金を受け取ると老齢年金が支給されなくなります。脱退一時金の受給は慎重に検討しなければなりません。
参考:技能実習生も公的年金制度への加入が必要です(外国人技能実習機構)
技能実習生に対する雇用維持支援について
新型コロナウイルス感染症の影響によって実習が継続できなくなった技能実習生も少なくありません。出入国在留管理庁は、技能実習生の雇用を維持するための支援を行っています。
具体的には、一定の要件を満たすことを条件として、在留資格「特定活動(就労可)」を許可し、日本において再就職・就労継続できるようにしています。
特例措置の期間は最大1年間です。ただし、特例措置で1年間在留したとしても、帰国が困難であれば6月の範囲で在留期間を更新できるようになっています。
また、転職・就職先を見つけるのが困難である場合、国の支援によって求人事業者とのマッチングをサポートしてもらうことも可能です。
参考:解雇等された外国人の方への就労継続支援のご案内(出入国在留管理庁)
まとめ
外国人技能実習制度をおさらいしつつ、技能実習生の給与の現状をお伝えしました。技能実習生が日本人よりも低賃金で働いている実情を受けて、今後の受入課題が明確になった方もいたのではないでしょうか。経営者には、給与だけでなく労働時間や年金、保険などの仕組みにも配慮が求められます。技能実習生が日本で生き生きと働けるよう、労働環境の見直しに取り組んでいきましょう。