特定技能外国人人材育成に活用できる育成のポイントとは何か?
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特定技能外国人を受け入れを検討する企業担当の方は、こんな情報をお探しではないでしょうか?
⚫︎受け入れたらどのように育成したら良いのか?
⚫︎受け入れたらどのように処遇したら良いのか?
⚫︎受け入れたらどのように定着を図ったら良いのか?
この記事では、まず、日本人に対する一般的な人材育成の考え方や方法をおさらいし、外国人特有の問題を加味しながら、特定技能外国人の育成方法に触れていきたいと思います。
一般的な人材育成の方法
経営者は、事業持続のためにはヒトモノカネや情報などの経営資源を活用し企業価値を高めていくことが使命となります。その中でもヒトがモノカネを司る根幹であることから、人材育成が企業価値を高めるうえで最も重要であることは広く認識されていることです。
まず、どうすればより良い人材育成ができるかについてのポイントを幾つか挙げたいと思います。
経営ビジョンおよび人材ビジョンの策定
人材を受け入れるうえで根幹となるものです。「事知一体」という言葉がよく用いられます。「事知一体」の「事」とは「事業革新」を、「知」は「知力革新」すなわち人材育成を指します。事業推進や事業革新とセットで人材育成を進めることが大原則となります。人材は、特に事業革新を真剣に取り組む過程で最も育つと考えられています。
経営ビジョンを策定する際には、事業戦略と人材育成をセットで考え連動させる必要があります。例えば「最先端技術で世界へ羽ばたこう」「高付加価値商品を提供し、お客様から喜びを得よう」のような経営ビジョンを策定した場合、「最先端技術者を各分野から採用または社内育成し、100名の最先端技術者集団を形成する」、「高付加価値商品開発ができる技術者・クリエイターを300名確保する」などの人材ビジョンが策定されることになります。
育成体系を構築
育成体系の構築は、人材育成に不可欠です。育成体系は賃金体系、人事評価体系と一致させることは一般的、ここでは資格等級制度を想定した育成体系を参考例として表示してみます。各等級の役割期待に対してそれぞれ必要となる研修を行うこをはポイントです。
区分 | 等級 | 役職資格 | 階層別 | マネジメント | テーマスキル | 通信教育 |
---|---|---|---|---|---|---|
管理職 | 6 | 事業部門経営者 /事業開発リーダー |
新任部長研修 | |||
5 | 事業部門代理 /先端技術者 |
人事評価研修 | 戦略立案研修 | 海外ビジネス動向研修 | ||
4 | 課長/主任技術者 | 新任管理者研修 | リーダーシップ・人材育成研修 | 新国際会計基準理解研修 | ||
一般職 | 3 | 課長補佐(係長) /主任技術者補佐 |
新任係長研修 | PDCAマネジメント サイクル習得研修 |
折衝力強化研修 | 実践管理者コース |
2 | 改善業務遂行者 | 中堅社員研修 | 営業スキル研修 | 問題解決コース | ||
1 | 定型業務遂行者 | 新入社員研修 | 事務改善基本コース |
参考:高原暢恭著「人材育成の教科書」図表21;教育体系の例
会社からサポートを提供
米国の人材コンサルティング会社であるロミンガー社がリーダーシップ研究に基づき提唱した学びの黄金率「70 20 10の法則」があります。多くのエグゼクティブを対象に自身がどうやって学びを得てきたかを調べた結果、成功している経営者たちは大まかに言って70%が職務、20%がコーチングなど人を通じて、10%が研修プログラムや読書といった座学から学びを得ていることが明らかになり一般に知られるようになりました。いわゆる「経験」が70%、他者からの「薫陶」が20%、そして、「研修」は10%であることです。
この記事の対象が経営者というわけではありませんが、広く一般的にこの考え方が導入されていますので、その観点から学びの黄金率「70 20 10の法則」に基づき、会社のサポートは以下の3つの要素で構成されることを考えられます。
まず、通信教育や座学トレーニング・ワークショップなど10%の「研修」、次は職務上で行う機会を提供という70%の「経験」、最後は上司やリーダーからの日常的なサポートやコーチングなど20%の「薫陶」である三つの要素です。
特定技能外国人の育成における考えられる課題
日本語能力の不足
外国人の育成を考える際に、まず課題になるのは言語ではないでしょうか?特定技能の申請条件には、日本語能力試験(JLPT) N4以上の日本語能力が必要とされています。N4の定義は次の通りとなりますが、日常生活では十分と言えるかも知れませんが、職場でのコミュニケーションとなると十分でしょうか?指示や業務の説明が理解できず、仕事遂行できない可能性が高いと考えられています。
【N4の定義】
(読む)基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
(書く)日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
働き方や文化の違いによる適応困難
働き方や文化の違いによる職場適応の困難は、特定技能外国人が日本の職場で働く際に生じる課題と考えられています。外国人労働者は、日本の労働環境や社会慣習、ビジネス文化などが自国と異なるため、適応まで結構時間がかかることがあり、また言葉の壁や異なるコミュニケーションのルールによって、業務の指示や意図の理解が困難になり、ミスや誤解が生じる可能性もあります。
中長期の育成を考えにくい
特定技能1号の在留期間が最長5年という制限があるため、中長期観点をベースにより深い育成計画を考えにくく、受け入れた外国人のエンゲージメントを獲得するには困難が伴います。5年という歳月は長いようで短く、また、5年ぐらい経過すると組織内でも戦力になり始め、さあこれからというタイミングではないでしょうか。そこで期限が到来してしまうのは受入側としての舵取りを難しくさせます。
特定技能外国人に対応する育成方法
上記外国人特有の問題を踏まえ、学びの黄金率「70 20 10の法則」と「等級制度」に沿って特定技能外国人の育成を考えてみます。
学びの黄金率「70 20 10の法則」を活用
70%経験:
特定技能外国人に対しては、実務経験を重視する育成が重要です。仕事現場での業務経験を豊富に積むことで、効率的に業務を遂行することができますので、実務に関するOJTの実施をお勧めです
20%薫陶:
経験豊富な指導者や先輩からの指導やアドバイスは不可欠です。指導者や先輩は、特定の分野で豊富な知識とスキルを持っていますので、彼らからの指導により、特定技能人材は専門知識や技術を効果的に習得することができます。特に同じ出身国の指導者や先輩が異文化の壁はないため、新入社員をよりよく日本の職場を適応させることに効果があります。特定技能人材の成長を促進するため、指導者や先輩と定期的なフィードバックや面談のチャンスを提供することをお勧めです。
10%研修:
特定技能人材が持続的に成長できる職場環境の整えも重要です。研修は、技能や専門知識の習得に役立つ、特定技能外国人の専門知識と技能の強化にも効果があると考えられますので、日本語に関する研修以外、分野技能に関する業務上の研修、また資格取得支援の提供もお勧めです。
「等級制度」を導入
前回の記事の中でも「等級制度」をご紹介したと思いますが、特定技能の人材育成にも「等級制度」をお勧めしたいです。
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等級制度は企業が社員に期待する能力・職務・役割により社員を区分する制度です。企業側が社員に期待する能力・職務・役割により各等級ごとに必要なスキルや知識を策定し、それぞれに適する育成内容を行うことができます。会社にとって社内教育資源の利用を最大化にすることは一方、特定技能人材の評価基準の明確化および公正な評価を可能にします。なお特定技能外国人人材自身も現在の能力と将来の成長方向をより具体的に把握でき、特定技能人材の成長意欲を高める効果もありますので、等級制度の活用を検討することをおすすめします。
まとめ
特定技能人材育成において優先的に整備すべきは、人事制度、育成システム、評価基準および報酬体系です。新たに整備する際に社内に対応できる人材がいる場合は、その後の運用も含め社内で対応できると思いますが、そういった人材がいない場合は、人事制度に関しては社労士と、育成システムや評価基準・報酬体系の構築については、人事コンサルに相談するのが良いでしょう。