特定技能と比較される在留資格「介護」ってなに?
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「在留資格「介護」とは何か」
「特定技能と在留資格「介護」は何が違うのか」
このようなことを考えている採用担当者向けの記事となっております。
介護事業者にて特定技能人材の採用が増えています。
(2019年9月:16名→2020年9月:343名。法務省調べ)
介護事業者が外国人を採用するには、特定技能、技能実習、在留資格「介護」の4つの制度があり、それぞれの制度の違いを理解することが肝要です。
今回は在留資格「介護」がどのような制度なのか解説していきます。
(EPA介護福祉士については、こちらの記事をご覧ください)
在留資格「介護」とは何か?
2016年11月、第192回臨時国会で「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」が成立し、2017年9月から在留資格「介護」の創設されました。
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を持つ外国人が介護の仕事に従事するための在留資格です。
対象者は、日本の介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人です。ちなみに介護福祉士養成施設は都道府県知事が指定する専門学校などが該当します。
在留資格「介護」の動向
2017年:18人 → 2018年:185人 → 2019年:592人
2017年9月から在留資格「介護」が施行されて以来、在留資格「介護」で在留する外国人は徐々に増加しつつあり、2017年末は18人、2018年末は185人、2019年末は592人となっています。
同様に介護福祉士養成校に留学する外国人も増えていて、2017年度は591人、2018年度は1,142人、2019年度は2,037人となっています。
介護福祉士の資格を取得したあと、日本で高度人材として就労してもらいやすくなるよう、介護福祉士修学資金等の充実も推進されています。
※参考
外国人介護職員の受入れ・活躍の現状(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
在留資格「介護」を取得するまでの流れ
在留資格「介護」を取得するまでの、一般的な流れは下記の通りです。
➀外国人留学生として入国する
②介護福祉士養成施設で2年以上学ぶ
③介護福祉士の国家資格を取得する
④在留資格「留学」から在留資格「介護」に変更する
⑤介護福祉士として業務を開始する
ちなみに、一時的に帰国してから在留資格「介護」であらためて入国することも可能です。
特定技能「介護」と在留資格「介護」の違い
在留資格「介護」以外にも、外国人が介護業界で働くための仕組みがいくつかあります。そのうちのひとつである特定技能「介護」は、2019年に創設されて以来、制度を活用した在留外国人が徐々に増えています(※)
※2019年12月:19人 → 2020年6月:170人 → 2020年12月:939人
本章では、特定技能「介護」の概要をおさらいしつつ、在留資格「介護」との違いを確認していきましょう。
特定技能「介護」の概要
近年、国内では中小事業者をはじめとして人材不足が深刻化しており、生産性向上や国内人材確保が困難な産業分野においては、一定の専門スキルを有する外国人を受け入れられる仕組みをつくる必要性がありました。
それに伴い「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が成立し、2019年4月から新たな在留資格である「特定技能」が創設されました。
定められた14の産業にて、本制度を活用した外国人採用が可能となっており、介護分野も14の産業のひとつとして認められています。
介護分野は、特定技能1号と呼ばれる在留資格で外国人の受け入れが可能で、従事する業務は、入浴や食事、排泄を含む身体介護のほか、付随するレクリエーションや機能訓練の実施などです。
(制度上、特定技能1号と2号があるが、介護分野は2号の対象外)
違い1.日本語能力の目安
特定技能「介護」:N4
在留資格「介護」:N2程度
(日本語能力試験はN1~N5の5つのレベルがあり、N1が最も難しくN5が最も易しいレベル)
特定技能「介護」の場合、入国時の要件は、国際交流基金日本語基礎テストの合格あるいはN4以上の保持に加えて、介護現場で働くのに必要な日本語能力が求められます。
一方で在留資格「介護」の場合、介護福祉士養成校の卒業生(養成校ルート)とほかの在留資格からの移行者(実務経験ルート)で、要求される日本語能力の目安は異なっています。
養成校ルートは、一部の養成校における留学生の入学要件はN2程度であり、実務経験ルートでは個人によります。
ちなみにN4は、日常生活の身近な話題の文章を読んで理解できたり、ややゆっくりとした会話を聞いて内容を把握できたりするレベルです。N2は幅広い話題について記載された新聞や雑誌の記事を読んで理解できたり、自然なスピードの会話やニュースを聞いて要旨を把握できたりするレベルです。
違い2.在留期間
特定技能「介護」:5年
在留資格「介護」:永続的な就労可能
特定技能「介護」の在留期間は、最長で5年です。
一方、在留資格「介護」の在留期間は、5年、3年、1年あるいは3か月です。介護福祉士として業務に従事したあと、在留状況にトラブルがなければ在留期間を更新できます。しかも更新回数に制限はないので、永続的に就労することも可能です。
なお、2017年12月に閣議決定された「新しい経済対策パッケージ」によれば、特定の条件を満たせば特定技能「介護」から在留資格「介護」への切り替えが認められることが公表されています。
現在、法務省令の改正に向けて準備が進んでいるとのことです。
在留資格「介護」に切り替えることができれば、永続的に就労することも可能です。
※引用
違い3.支援機関
特定技能「介護」:登録支援機関によるサポート必要
在留資格「介護」:特になし
特定技能「介護」では、受け入れ企業は、登録支援機関によるサポートの元で特定技能外国人を雇用する義務があります。
登録支援機関とは、受入れ企業(特定所属機関)から委託を受け、特定技能1号外国人が、特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うための、在留期間における支援計画の作成、実施を行う機関です。
2021年2月17日時点では全国で5,587件の登録があります。
支援業務は、下記のような業務を指します。
(支援業務の例)
・支援責任者の氏名及び役職など
・登録支援機関
・事前ガイダンス
・出入国する際の送迎
・住居確保や生活に必要な契約支援
・生活オリエンテーション
・公的手続きに関する同行
・日本語学習機会の提供
・相談や苦情に関する対応
・日本人との交流促進
・転職支援
・定期面談や行政機関への通報
一方、在留資格「介護」の場合、受入調整機関等の支援が基本的にはありません。法人や事業所の自主的な取組に支援はゆだねられます。
違い4.家族の帯同
特定技能「介護」では、基本的に家族の帯同は認められていません。
一方、在留資格「介護」では配偶者と子の帯同が認められています。
特定技能「介護」の方が、在留資格「介護」に切り替えることができれば、家族の帯同が可能になります。(制度整備中につき、現状は不可)
特定技能「介護」と在留資格「介護」の違い、まとめ
最後に、特定技能「介護」と在留資格「介護」の違いを表にまとめて整理します。
比較項目 | 在留資格「介護」 | 特定技能「介護」 |
日本語能力の目安 |
・養成校における留学生の入学要件はN2程度 ・実務経験ルートでは個人による |
・国際交流基金日本語基礎テストの合格あるいはN4以上の保持 ・介護現場で働くのに必要な日本語能力 |
在留期間 | ・5年、3年、1年あるいは3か月 ・在留期間は更新可能で永続的な就労も可能 |
・最長で5年 |
外国人が受ける支援 |
・受入調整機関等の支援は基本的にない ・法人や事業所の自主的な取組 |
登録支援機関によるサポート必要 |
家族の帯同 | 配偶者と子の帯同が認められている | ・基本的に家族の帯同は認められていない |
このように在留資格「介護」と特定技能「介護」は、制度上で異なる条件が定められています。
介護分野で外国人の受け入れの際は、在留資格「介護」と特定技能「技能」の違いを理解したうえで検討しておくことが肝要です。