【徹底解説】特定技能と比較されるEPA介護福祉士について
- 介護
- 外国人採用
- 特定技能
\この記事でわかること/
- EPA介護福祉士候補者の制度概要と現状
- 特定技能「介護」とEPA介護福祉士候補者の違い
「外国人採用を検討したいんだけど、何の制度を使っていいかわからない」
介護事業者の採用担当者で、そんなお悩みを抱えている方は少なくありません。そんな方々に向けた記事になります。
介護業界において、特定技能人材の採用が増えています。
出入国在留管理データ(2021年2月12日公表)によれば、介護分野における特定技能人材は。2019年9月は16名しかいませんでしたが、2020年12月には939人まで増加しています。
しかし 、介護事業で外国人を受け入れる仕組みは様々あり、受け入れの目的や在留期間などが異なる点に注意が必要です。
本記事では、特定技能「介護」と比較されることの多い、EPA介護福祉士候補者の概要を説明するとともに、特定技能「介護」との違いについて解説していきます。
EPA介護福祉士候補者とは何か?
EPA介護福祉士候補者とは、EPA(経済連携協定)にもとづく外国人の介護福祉士候補人材です。ということで、前提となるEPAの概要をおさらいしたうえで、EPA介護福祉士候補者についてみていきます。
EPAの概要
EPAとはEconomic Partnership Agreementの略称であり、特定の国やエリア同士における貿易や投資を促進するための条約です。
一般的には「自由貿易協定」の呼称が使用されますが、日本においては、投資、ヒトの移動や協力等の広範囲な分野を対象としていることから、「経済連携協定」を用いています。
具体的な約束の例は下記の通りです。
- 輸出入にかかる関税の撤廃と削減
- サービス業を行う差異の規制を緩和・撤廃する
- 投資環境の整備をする
- ビジネス環境の整備について協議する
EPAによって、モノ・ヒト・カネ・サービスに関する移動の促進が期待できます。
EPA介護福祉士候補者の概要
EPA介護福祉士候補者は、EPAにもとづく外国人の介護福祉士候補人材です。
日本の介護施設で就労したり研修を受けながら、日本で介護福祉士の資格取得を目指します。
受け入れにあたっては、介護福祉士国家試験に合格するための研修と、その支援体制の整備が必要です。資格取得後は永続的に就労できるようになります。
日本では、インドネシアやフィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者の受け入れを実施してきました。2019年8月時点の累計受入人数は、3国をあわせると6,400人(外国人看護師も含む)を超えています。
受入れの目的は、介護分野の労働力不足を補うことではありません。あくまで、経済活動の連携強化から実施しており、相手国からの要望にもとづいて交渉した結果となっています。
EPA介護福祉士候補者の合格率
2020年に公表された「第32回介護福祉士国家試験結果」によると、EPAにもとづく外国人介護福祉士候補者の合格者は337名であり、合格率は44.5%でした。
ちなみに各国の合格率は、下記になります。
- ベトナム:92.2%
- フィリピン:33.2%
- インドネシア:39.2%
ベトナムの合格率が極めて高い傾向が読み取れます。
※参考
介護福祉士試験の内容
介護福祉士国家試験は、介護福祉士として必要な知識及び技能を試される試験です。
社会福祉振興・試験センターが実施しており、筆記試験(一次試験)と実技試験(2次試験)の形態に分かれています。筆記試験に合格しないと実技試験は受験できません。
筆記試験で問われるテーマは下記です。
- 人間と社会
- 介護
- こころとからだのしくみ
- 医療的ケア
実技試験では介護等に関する専門的技能が試されます。
合格するには、認知症や障害、老化、コミュニケーションなどに関する理解が求められます。
※参考
EPA介護福祉士候補者と特定技能「介護」の違い
EPA介護福祉士候補者と特定技能「介護」は、いずれも外国人を介護分野の職種に受け入れる制度にもとづきますが、異なる点がいくつかあります。
まずは特定技能「介護」の概要をおさらいしつつ、それぞれの違いについて確認していきましょう。
特定技能「介護」について
特定技能「介護」とは、介護職で働く外国人向けの在留資格です。
2018年12月に、国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、2019年4月より施行となりました。改正法では、新たな在留資格として「特定技能1号」「特定技能2号」が創設されました。
- 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
※参考
新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)
特定産業分野(14分野)の中に介護分野が含まれていますが、特定技能2号に関しては、建設、造船・舶用工業の分野のみ受け入れ可能であり、介護は対象外となっています。
違い1.在留期間
- EPA介護福祉士候補者:4年間
- 特定技能:5年間
EPA介護福祉士候補者の場合は、介護福祉士の資格取得まで4年間の猶予があり、資格が取得できなければ、帰国しなければなりません。資格を取得した後は、3年間(更新可能)の在留期間が与えられます。
一方、特定技能「介護」の場合は、通算で上限5年まで在留できます。6ヶ月あるいは4ヶ月ごとに更新をしなければなりません。
違い2.家族の帯同
- EPA介護福祉士候補者:帯同可
- 特定技能「介護」:帯同不可
EPA介護福祉士の場合は、扶養者(本人と同居)となる配偶者と子は、特定活動のビザを申請できます。
資格外活動許可を受ければ、原則として一周について28時間以内の就労活動も可能です。
その一方で、特定技能1号は家族の帯同が基本的に認められていません。
違い3.介護技術
- EPA介護福祉士候補者:現地の高校または大学卒業+介護士認定または看護学校卒業
- 特定技能「介護」:介護特定技能試験の合格、または2年以上の実務経験
特定技能の在留資格で受け入れる外国人は、介護特定技能試験の合格、または2年以上の実務経験が求められます。の技能と日本語能力の水準が求められます。
また、日本語能力水準に関しても「日本語基礎テスト」あるいは「日本語能力試験(N4以上)」、「介護日本語評価試験」の合格を基準としています。
一方でEPA介護福祉士候補者は、現地の高校または大学卒業+介護士認定または看護学校卒業が条件となっており、特定技能と比較すると必要な技術や経験や少ないと言えます。日本語能力の目安に関しては、就労開始時点でN3程度です(但し入国時点では、インドネシアがN4程度、フィリピンはN5程度、ベトナムはN3程度)。
違い4.配置基準算定までの期間
- EPA介護福祉士候補者:研修+実習修了後
- 特定技能「介護」:すぐに
EPA介護福祉候補者は、研修+実習修了後から初めて職員とsての算定人数に含めることができます。
一方で特定技能「介護」は、すぐに配置基準への算入が可能です。即戦力として人材を受け入れたいニーズがある場合は、特定技能「介護」の方が合うと考えられます。
特定技能とEPA介護福祉士候補は、制度の目的が異なる
以上、EPA介護福祉士候補者の概要をおさらいしつつ、特定技能「介護」との違いを解説しました。
それぞれの制度が制定された目的が異なることに伴い、制度内容やルールにも違いがあるのだと考えて頂いて良いかと思います。
- EPA介護福祉士候補者:日本と相手国の経済上の連携を強化
- 特定技能「介護」:人手不足に対応するために、外国人人材を確保
最後に、EPA介護福祉士候補者と特定技能「介護」の違いを表にまとめます。
事項 | EPA介護福祉士候補者 | 特定技能「介護」 |
在留期間 | 資格取得まで4年間の猶予あり資格を取得した後は、3年間(更新可能) | 通算で上限5年まで在留 |
家族の帯同 | 可能 | 不可 |
介護技術 | 現地の高校または大学卒業+介護士認定または看護学校卒業 | 介護特定技能試験の合格、または2年以上の実務経験 |
配置基準算入までの期間 | 研修+実習修了後 | すぐに |
特定技能とEPA介護福祉士候補の連携は可能
EPAにもとづいて来日し、4年間介護サービスに従事した外国人は、無試験で特定技能1号に移行できます。
今までは、EPAにもとづいて来日した外国人は、4年間の滞在中に介護福祉士国家試験に合格できないと、帰国しなければなりませんでしたが、特定技能1号に切り替えれば、試験に挑戦できる期間が増えます。
外国人の受け入れを検討している介護事業者は、特定技能「介護」およびEPA介護福祉士候補者、両制度の動向にも注目しておくことが肝要と思われます。