特定技能外国人人材の人事評価に対する課題とは?外国人も公正公平に評価できる人事評価制度ををご紹介!
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特定技能で働いている外国人が自分の仕事内容や日本の安定な雇用関係に満足している一方で、給料や人事評価制度の不備で昇進・昇給が難しいということに不満を抱いています。特定技能外国人人材を採用すると管理費や支援料が発生するため、コストは日本人より高いですが、もし給料や人事評価制度に不満を持てれば転職や離職のリスクが高いです。このようなリスクを回避するために、特定技能外国人にも適用し納得できる人事評価制度の作成がカギです。
1.一般的な人事評価の決め方
人事評価は、企業や組織が、従業員の業務成果や能力、行動様式などを定量的・定性的に評価し、従業員の報酬や昇進など処遇格差につながり、組織の目標達成に向けた戦略的な人材マネジメントに欠かせないものです。
人事評価の人材マネジメント上の公式な目的は二つあることが明確されました。
①待遇の格差付けに対する根拠の明確化。
一人ひとりの貢献度・能力・態度を明確に把握し、処遇の格差付けの根拠をはっきりさせ、説明がつけられるようにする。
②育成指導ポイントの明確化。
一人ひとりの貢献度向上および育成のポイントを明確化し、マネジメントに活かすようにする。
参考資料:『人事評価の教科書』
人事評価の決め方は、組織によって異なりますが、一般的に従業員の成果や業績、能力やスキル、行動や態度、貢献度、業務遂行にその他必要な要素を基に、評価テーブルを作成し、評価を行います。
つまり、人事評価の3大要素群―成果、能力、情意(態度)から従業員を評価する会社が多いです。
人事評価決定と実施は被評価者に受けられることが求められますので、下記5つの原則を守ることが必要です。
①公正な評価:評価制度の目的に沿って正しい運用がなされること。悪意の利用から守れている。
②評価基準の明確化:評価対象や評価尺度が具体的であること。
③評価基準の理解:評価の基準がみんなに伝わっていること。
④評価基準の遵守:評価基準が守られていること。
⑤評価責任の自覚:評価者が、被評価者の成長に責任があるということを自覚して評価すること。
特定技能外国人の人事評価における課題
同一労働同一賃金の原則で、特定技能外国人材に対する人事評価は、基本的には日本人材に対する評価と同じ基準を適用することが望ましいですが、以下のような特有の問題が存在し、日本人と同じ評価テーブルを使うことが難しいです。
1.言語の壁
特定技能外国人は、日本語が母国語ではないため、日本語による業務やコミュニケーションに苦労することがあります。そのため、評価においては、評価基準や業務内容についての理解度に誤差が生じる可能性があります。
2.文化的違いによる誤解
特定技能外国人の出身国の文化や習慣によって、評価に対する意識や価値観が異なることがあり、企業と異文化間のコミュニケーションについての課題が存在します。異なる価値観による判断基準の違いにより、評価内容に対して誤解が生じることがあります。
3.中長期の評価を考えにくい
日本企業では、一般的には中長期的な雇用を前提に採用されています。しかし、特定技能の在留期間は最大5年間しかなく、中長期から見ると短いため、そのまま日本人と同じ人事評価テーブルを使うと公正な評価が困難になることがあります。
特定技能外国人に適用する人事評価制度
特定技能外国人の場合、国籍や言語の違いなど多様な背景を持った人材が働くことになります。そのため、従業員のスキルや能力を客観的に評価することが重要です。等級制度は、従業員のスキルや能力を定量的に評価することができるため、日本人はもちろん、特定技能外国人の人事評価にも適しているので、おすすめします。
等級制度は企業が社員に期待する能力・職務・役割により社員を区分する制度です。能力・職務・役割は等級区分の「基軸」で、それら基軸により代表的な等級制度は「職能資格制度」、「職務等級制度」と「役割等級制度」これら3つがあります。
等級制度を導入することで、人事評価における成果、能力、情意(態度)の3大要評価素群も各等級に求められるレベルにより区分し、評価することもできます。また、等級制度によって、従業員のスキルや能力に応じた報酬やキャリアアップ制度を設けることもできます。これにより、従業員のモチベーション向上やスキルアップを促進し、組織全体の業績向上につなげることができます。
ただし、等級制度を導入する場合は、評価基準を明確にすることが重要です。また、評価基準の公正性や透明性を確保するために、評価者の選定や評価基準の統一化などの評価者体系の設計も必要です。
特定技能外国人人事評価制度策定のプロセス
特定技能外国人に対しても公正公平の人事評価の策定方法について、下記の➀から➄のステップをおすすめします。
➀自社の経営ビジョンと事業戦略からコアプロセスを明確化
自社のビジョンや事業戦略に基づいて、重要なプロセスを特定し、それらのプロセスを明確に定義することが必要です。
➁人事評価要素の設計(目標管理と)
人事評価における重要な要素として、目標管理を導入することが推奨されます。目標管理を通じて、従業員の目標設定や評価基準の設定を行い、業績向上に向けた取り組みを促進します。
➂評価者体系の設計
評価者の選定や評価基準の統一化など、評価者体系を設計することが必要です。評価者の資格や役割、評価基準などを明確にし、公正かつ適切な評価を行います。
➃人事評価期間の設計
人事評価の期間を設定し、従業員に対してフィードバックや改善点の指摘を定期的に行います。評価期間を明確にし、適切なタイミングで評価を実施することが重要です。
➄人事評価結果の処遇への反映の仕組み化
人事評価の結果を適切に処理するために、報奨制度やキャリアアップ制度を設け、従業員のモチベーション向上やキャリアアップを促進します。また、不適切な評価結果に対する是正措置や、フィードバックを活用した改善活動などを行うことが必要です。
まとめ
以上が特定技能外国人も適切評価できる人事評価制度と導入のプロセスです。
人事評価を行うことで、特定技能外国人のスキルや成果に正確に評価し、適切な報酬や昇進の判断基準を設定することができます。これにより、特定技能外国人のモチベーションを高め、彼らがより良い成果を出すこと、能力向上や成長を促すことができるようになりので、特定技能外国人が賃金や公正な評価をうけとらないための転職と離職のリスクもひくくなることが可能となります。
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参考資料
「人事評価の教科書」: 高原 暢恭, 労務行政, 東京, 2008年