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「特定技能」に関する二国間取り決め(MOC)とは??

特定技能で外国人を採用する場合、国内の留学生といった日本在住者を採用するパターンと海外在住者を採用するバターンの2つがあります。

今回は海外在住者を採用する場合に理解しておくべき、特定技能に関する「二国間取り決め(以下、MOC)」について解説いたします。

特定技能に関する「二国間取り決め(MOC)」とは?

MOCとは、特定技能外国人を日本で円滑に受け入れるために、日本と送り出し国との間で結ばれる取り決めのことです。

2018年12月25日の第3回外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議により、「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」が発表され、基本方針の中でMOCについて述べられています。

中身は、日本企業が海外国から人材を採用する場合の取り決めなど、政府間の文章や送り出す際のルールを決めるといった内容です。このルールこそが、特定技能に関する「MOC」です。

(出典:出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取り組み」

制度の運用に関する基本方針と同時に、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が作成されました。結果、外国人材の送り出しが想定され、日本語試験が現地で行われる9各国(優先9か国 *1)との間で、「目的」、「連絡窓口」「情報共有の枠組み」「技能・日本語試験への協力、制度見直し時の対応その他」に関して各国とのMOCにて定めています。

情報共有の枠組みでは、おもに以下の情報が含まれます。

  • 保証金の徴収、違約金の定め
  • 人権侵害行為
  • 偽変造文書等の行使や費用の不当な徴収

必要に応じて、優先9か国以外の国でも、同様の政府間文章の作成にむけた交渉を始めることとなっています。

*1:優先9各国の内訳:ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル

MOC締結の背景

MOC締結の背景は、特定技能制度が設立する前から外国人を受け入れる枠組みとして存在していた技能実習制度にあります。技能実習制度では送り出し国側に、技能実習生から保証金を徴収する悪質な仲介業者(ブローカー)が存在しました。

ブローカーの存在は、技能実習生が借金を背負うことに繋がり、採用後の失踪や事件発生などに繋がっています。

2019年に設立された特定技能では、悪質な仲介業者を排除し、クリーンな状態で外国人が日本に来れる枠組みを作るためにMOCを取り決めました。

MOCによって決められている受け入れの枠組みは国によって異なります。それぞれ簡単に説明していきます。

各国とのMOC締結状況

政府による「総合的対応策」でMOCを作成することが公表された優先9か国は◯で表示しております。(2020年6月15日現在)

締結日
◯フィリピン 2019年3月19日
◯カンボジア 2019年3月25日
◯ネパール 2019年3月25日
◯ミャンマー 2019年3月28日
◯モンゴル 2019年4月17日
スリランカ 2019年6月19日
◯インドネシア 2019年6月25日
◯ベトナム 2019年7月01日
バングラディッシュ 2019年8月27日
ウズベキスタン 2019年12月17日
パキスタン 2019年12月23日
◯タイ 2020年2月4日
◯中国 未締結

それぞれの国ごとの大まかな内容を説明していきます。

フィリピン

フィリピンから特定技能で外国人材を受け入れるためには、フィリピン海外労働事務所で発表している認定送出機関一覧から送り出し機関を選ぶ必要があります。ただし、5名以下の紹介の場合、送り出し機関は不要です。

・送り出し体制:送り出し機関を通じての送り出し。ただし5名以下の受け入れの場合は、送出機関は不要。

・送り出し機関に支払う費用相場:20万円~40万円

・送出国側の規制・手続き:特定技能外国人を受け入れる際は、必要な書類をPOLO(フィリピン海外労働事務所)に提出し、審査・認証を受けてから、地方出入国管理庁へ申請する流れになります。

・詳細のガイドライン:http://www.moj.go.jp/content/001315103.pdf

・送り出し体制

送り出し機関を通じての送り出し。ただし5名以下の受け入れの場合は、送出機関は不要。

・送り出し機関に支払う費用相場

20万円~40万円

・送出国側の規制・手続き

特定技能外国人を受け入れる際は、必要な書類をPOLO(フィリピン海外労働事務所)に提出し、審査・認証を受けてから、地方出入国管理庁へ申請する流れになります。

・詳細のガイドライン

http://www.moj.go.jp/content/001315103.pdf

カンボジア

*出典:法務省「各国における手続きについて」

カンボジアは、法務省のホームページにて公開されている認定送出機関を通じてのみ受け入れが可能です。

・送り出し体制

認定送出機関を通じてのみ

・送り出し機関に支払う費用相場

認定送出機関を通じての受け入れ

・送出国側の規制・手続き

送り出し機関を通じて、カンボジア政府から証明書を発行してもらい、入館へ手続きの際に証明書を添付する必要があります。

・詳細のガイドライン

http://www.moj.go.jp/content/001317008.pdf

ネパール

*出典:法務省「各国における手続きについて」

ネパールは、送り出し機関は必要ありませんが、マッチング自体はネパール政府を通じて行われます。その場合、駐在ネパール大使館に求人申込を提出することも可能です。(有料)

・送り出し機関に支払う費用相場

不要*駐在ネパール大使館に求人募集をしてもらう場合は有料。

・送出国側の規制・手続き

ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門に対して、オンラインで海外労働許可証を申請する必要があります。海外労働許可証は、ネパールを出国する際に必要で、日本国に提出する必要はありません。また日本在留者に関しても同様に海外労働許可証の申請が必要です。

・詳細のガイドライン

http://www.moj.go.jp/content/001314644.pdf

ミャンマー

ミャンマーは認定送出機関を介して受け入れる必要があります。

・送り出し機関に支払う費用相場

最大1,500USドル(約17万円)

・送出国側の規制・手続き

送り出しは、認定送出機関を仲介する必要。手続きに関しては日本政府側とミャンマー政府側で協議が続いている。

・詳細のガイドライン

未定

モンゴル

政府機関の労働・社会保障サービス総合事務所(GOLWS)を窓口として、送出を行う。その他の窓口はありません。

・送り出し機関に支払う費用相場

不要

・送出国側の規制・手続き

国内在住者・海外在住者ともにGOLWSへの登録が必要。しかし、詳細の手続きに関しては未発表。

・詳細のガイドライン

未定

スリランカ

認定送出機関を通じた送り出しとなる。ただし、新規入国の元技能実習生は送出機関を仲介せずに、出国が可能。(ただし、スリランカ政府への登録が必要。)

・送り出し機関に支払う費用相場

未定

・送出国側の規制・手続き

認定送出機関を通じた受け入れが必要。ガイドラインを今後発表予定。

・詳細のガイドライン

未定

インドネシア

*出典:法務省「各国における手続きについて」

インドネシアは送り出し機関の必要はないとしています。しかし、特定技能で働くためには、インドネシア政府が管理する求人・求職のための 労働市場情報システム「IPKOL」に受け入れ企業が登録して、求人を募集することを推奨しています。

・送り出し機関に支払う費用相場

不要。政府管理のシステム利用料も無料

・送出国側の規制・手続き

海外在住のインドネシア人は、日本への渡航のための在留資格申請を行う前に、就労する本人がインドネシア政府が管理する海外労働者管理システム「SISKOTKLN」にオンライン登録する必要があります。

登録が完了すると、インドネシア政府から海外労働者派遣・保護庁の移住労働者証「E-KTKLN」が発行されます。その後、在インドネシア日本大使館・総領事館に対して、在留資格の申請を行います。

・詳細のガイドライン

http://www.moj.go.jp/content/001316341.pdf

ベトナム

これまで数多くの技能実習生を送り出してきたベトナム。特定技能の受け入れでも、送り出し機関が必要です。

・送り出し機関に支払う費用相場

特定技能外国人の給料の1ヶ月以上相当

(その他、教育・訓練費や渡航費を日本の受け入れ機関が負担する必要があると決まっている。)

・送出国側の規制・手続き

駐日ベトナム大使館または労働・痛病兵・社会問題省海外労働管理局(DOLAB)が特定技能外国人に対して、「推薦者表交付申請」を発給することになっているが、手続き方法は未定のまま。推薦者表交付申請の対象は、海外労働局が認定した送出機関によって送り出された人や日本国内在住者で受け入れ機関によって採用された者を含むとされている。「推薦者表交付申請」許可が下りてから在留資格認定証明書許可申請を行います。

・詳細のガイドライン

https://www.vn.emb-japan.go.jp/files/000494586.pdf

バングラディッシュ

二国間協定に送出機関の記述がないため、送出機関の関与は不明です。

・送り出し機関に支払う費用相場

不明

・送出国側の規制・手続き

未定だが、バングラディッシュ政府は、送出機関の関与の方法等を含めたガイドラインの作成を検討している。

・詳細のガイドライン

なし

タイ

*出典:法務省「各国における手続きについて」

タイは政府が国外派遣事業を許可した送出機関から受け入れが可能です。また、送出機関を仲介せずに、企業と求職者の間で直接連絡をとって、直接雇用をすることも可能になっています。

・送り出し機関に支払う費用相場

未定

・送出国側の規制・手続き

新規入国者はタイ大使館における雇用契約の認証とタイ王国労働省(MOL)に出国許可申請が必要になります。日本在留者はタイ大使館における雇用契約の認証が必要です。

・詳細のガイドラインhttps://japan.mol.go.th/en/download/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ab%e5%85%a5%e5%9b%bd%e3%83%bb%e5%b0%b1%e5%8a%b4%e3%81%99%e3%82%8b%e3%82%bf%e3%82%a4%e4%ba%ba%e5%8a%b4%e5%83%8d%e8%80%85%e3%81%ae%e8%aa%8d%e8%a8%bc%e6%89%8b%e9%a0%86-%e7%89%b9%e5%ae%9a%e6%8a%80%e8%83%bd%e5%88%b6%e5%ba%a6

ウズベキスタン

二国間協定に送り出し機関についての記載がなく、詳細は未定です。

・送り出し機関に支払う費用相場

未定

・送出国側の規制・手続き

未定

・詳細のガイドライン

未定

パキスタン

二国間協定に送り出し機関についての記載がなく、詳細は未定です。

・送り出し機関に支払う費用相場

未定

・送出国側の規制・手続き

未定

・詳細のガイドライン

未定

MOC未締結の国からでも、在留資格「特定技能」で受入れ可能か??

法務省によると、MOCを締結していない国からも特定技能での外国人受け入れは可能です。

しかし、それぞれの国の国内規定に基づき一定の送り出し手続きが定められている場合があります。これは、あくまで送出国から特定技能外国人を送り出すための手続きであって、日本側の在留資格申請のための手続きではありません。

ですから、MOCが締結されていないからの受け入れを想定している場合は、事前に在日本領事館(大使館)等に確認しておくことをおすすめします。

特定の国から直接外国人を受け入れる場合は、送り出し国のMOCを確認しよう。

送り出し国によって受け入れの枠組みや支払い費用項目、提出書類などが異なっているので、送り出し国のMOCを理解しないと、海外から「特定技能」で人を採用することは難しいでしょう。

採用を積極的に考えている国に関しては、MOCの実物を確認してみることをおすすめします。また、すでに受け入れたい送り出し国からの受け入れ実績がある行政書士の先生に相談してみるのもよいでしょう。


MUSUBEE編集部

特定技能の外国人採用を考える企業にとってお役立ち情報を提供します。

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