【前編】特定技能の手続きって何があるの?谷島行政書士代表 谷島先生に聞いてみた
- インタビュー
2019年4月、特定技能の制度がはじまり、活用する企業増えてきました。MUSUBEEでも、特定技能の外国人を採用した企業が、ビザの申請を進めてます。
しかし、特定技能の人材採用を行う採用現場では、
- 特定技能の制度がよく理解できていないため、特定技能での採用に踏み切れない
- ビザ申請や更新などの専門的な領域がよくわからず活用しづらい
- 外国人採用の社内体制が整っておらず、どんなサポートをすればいいのかわからず不安
などの声があるかと思います。
この記事を読んでいる方の中にも、同じような不安を持った採用担当者の方が多くいらっしゃるでしょう。
そこで今回MUSUBEEでは、「谷島行政書士事務所」の谷島行政書士に企業の経営者や採用担当者が気になるであろう「特定技能で採用を行った後のビザ申請業務」から「入社後のサポートで必要な手続き」について前・後編に分けて聞いてきました。今回は【前編】になります。
特定技能を活用する企業は、「自社が受け入れ基準を満たすか」を最初に確認する必要
【谷島先生のプロフィール】
谷島 亮士(たにしま りょうじ)行政書士。行政書士・司法書士事務所の補助者時代に試験合格を経て、その後、5年間大手ハウスメーカー勤務後、独立。これまで外国人ビザの申請業務10年以上に渡り行い、申請許可数は都内でもトップクラスの実績を誇る外国人ビザ申請のプロ。
ーー谷島行政書士事務所は、都内でもトップクラスの申請許可数を誇るほか、登録支援機関として採用後の外国人サポート(支援業務)を行う、行政書士事務所です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは自己紹介をお願いします。
谷島: 谷島行政書士事務所で代表をしています、谷島と申します。これまで開業から10年以上の間、外国人ビザの申請業務を行ってきました。
ーーどのような企業が特定技能の相談にいらっしゃいますか?
谷島: 特定技能のビザ申請に関して言えば、大小様々な企業がいらっしゃいます。例えば、世界的に拠点をもつ一定以上規模の企業もいれば、社会保険の体制が整っていないような零細企業からもお声がけ頂いております。
ーーそうなんですね。企業からビザ申請の依頼を受けたときにどんなサポートをしていますか??特定技能のビザ申請と外国人の生活支援をする登録支援業務の2つがあると思いますが、まずは入社する前のビザ申請について教えてください。
谷島: 基本的にまずは「特定技能の外国人を雇用できるか」といった大前提の要件を確認しています。すなわち、「受入れ企業が特定技能を活用する要件を満たしているか」ということですね。
たとえば、社会保険の体制や、「企業の産業分類」と「雇用したい特定技能の外国人がビザ申請できる業種」がマッチしているかを確認します。
ーーなるほど、まずは受入れ企業自身が特定技能を活用する要件を満たしているかを確認する必要があるのですね。「企業の産業分類」とはなんでしょうか??
谷島: 産業分類とは、簡単に言えば外食業や食品製造業といった業界の種類です。特定技能ビザ申請の場合、ビザを申請できる業種が14業種に限られており、企業がどの産業分類に属するかによって、14業種のどの業種で特定技能の外国人を雇用できるかが決まります。ですから、依頼された企業の産業分類が14業種の何にあたるのかをまず最初に確認しますね。
【特定技能対応14業種】
*編集部作成
産業分類を確認しないと、後々ビザ申請ができないことが分かり、企業と求職者のお互いが不幸になってしまいますので。
特に、パン屋やスイーツ屋の場合は産業分類の判断が難しいです。
通常、パン屋やスイーツ屋は「パン・菓子製造業」という産業分類に該当します。「パン・菓子製造業」の企業が特定技能で採用をする場合は特定技能ビザの業種は「飲食料品製造業」になります。
しかし、最近はカフェスペースを持っているパン屋も多いですよね。そういった店舗の場合、特定技能ビザの業種を「外食業」として申請する企業がいます。ですがパン屋の場合、店舗の産業分類が「パン・菓子製造業」と判断されるため、「外食業」で申請したビザ申請が不許可になってしまうケースが出てきます。
ーーなるほど。特定技能のビザ申請では、企業がどの産業分野に該当するかにより、雇用できる外国人の業種が変わるのですね。外国人は特定技能のビザを取得する条件として、特定技能の14業種ごとに用意される試験(特定技能評価試験)に合格する必要があります。ですから、企業の産業分類の確認は、外国人採用を開始する前に確認する必要がありますね
谷島: はい。特定技能での採用を始めたばかりの場合だと、企業も産業分類や受入れ業種のことまで考えることは難しいことと思います。
ーー初めて特定技能で採用する企業は、ビザ取得の条件などもわからないはずなので、知らずに進めてつまずいてしまいそうです。
谷島: こういったトラブルを避けるために、弊社では独自のチェックリストを活用してます。企業が「特定技能を活用して外国人を受け入れられるか」をヒアリングして確認していますね。
*谷島行政書士(左)弊社リポーター(右)
*谷島行政書士事務所ではコロナ対策もしっかりと施されいました。
*チェックリストを実際に見せていただきました。
谷島: また、出入国管理法や許認可の取得は個別に解釈が必要です。解釈は行政書士次第になるので、谷島行政書士事務所では、特定技能の申請は特定技能専任の行政書士が行います。そうしないと、依頼を受けた企業でビザ申請ができるかを判断できないためです。
特定技能のビザ申請をするために必要な書類とは
ー特定技能のビザ申請を行う際は、必要な書類はなんですか??
在留ビザ変更の場合と新規ビザ申請の場合で書類は異なりますが、基本的に70種類以上の書類を提出します。
*書類を見せてもらう編集部
【特定技能1号の在留資格認定証明書交付申請に係る提出書類一覧】
1.在留資格認定証明書交付申請書 / 在留資格変更許可申請書 | 10.役員の住民票の写し |
2.在留資格認定証明書交付申請書 | 11.決算文書の写し(直近2年分) |
3.特定技能外国人の報酬に関する説明書 | 12.登記事項証明書 |
4.特定技能雇用契約書の写し | 13.特定技能所属機関概要書 |
5.雇用条件書の写し | 14.特定技能所属機関に係る労働保険資料 |
6.事前ガイダンスの確認書 | 15特定技能所属機関に係る社会保険資料 |
7.日本語資格の合格証の写し | 16.特定技能所属機関に係る納税証明 |
8.技能試験の合格証の写し | 17.1号特定技能外国人支援計画書 |
9.採用者の健康診断個人 | 18.その他書類 |
*法務省サイトをもとに編集部で作成
ーー70種類もあるんですか!?とても多いですね。
はい。我々も企業に書類を70種類下さいとリストを渡しても企業が困惑されるので、企業それぞれに応じて必要な書類をピックアップし、伝えております。
基本的な書類を作る業務は我々が代行し、企業にはサインや押印、チェックなどをお願いします。それでも特定技能の申請負担はかなり大きいですが。
ーービザ申請をしたことがない、企業の担当者がこれだけの量の書類を作成するのは大変そうですね。ビザ申請にかかる代行費用はどれくらいですか??
谷島: 谷島行政書士事務所では、特定技能に関して大きく2つプランがございます。
- 登録支援機関としてご依頼いただく
- 顧問契約としてご依頼いただく
金額の幅としては9~20万円台で可能です。もちろん案件の難易度によって変化はございます。
顧問契約をご依頼いただいた場合、企業の状況をより詳しく確認してから手続きを進めることができるので、より確実にビザ申請をクリアして外国人の雇用ができます。
ーー特定技能のビザ申請をしてから、許可が降りるまでの期間はどれくらいですか??
谷島: 特定技能はビザ申請をしてから1~2ヶ月で許可がおります。
ーー企業は、採用してから入社までにかかる期間を「書類準備期間」と「申請許可待ち期間」で事前に見積もっておく必要がありますね。
企業が特定技能のビザ申請を外部委託する理由
ーーこれまでの話で、申請書類が膨大ということはわかりました。ただ、企業では「コストを削るために、自社で対応したい」というのが企業の本音だと思います。企業が自社でビザ申請や入社後の登録支援業務を行うことは可能でしょうか?
谷島: 書類作成に人材を充てることができる場合、申請書類をつくることは可能でしょう。しかし、単に提出書類を作ることと、許可がおりる資料を作ることはまた別の話です。不許可になってしまうと、次の申請で提出する書類が増えてしまい、より大変になります。
また、ビザ申請が不許可になった外国人は、持っている在留ビザの期限がありますので、最悪の場合は入社辞退に繋がる可能性があります。
仮にビザ申請が通ったとしても、書類変更時の変更申請が必要になります。これが期限内適切にできないと、虚偽申請となり、在留許可が取り消しになることもあります。この業務を適切にできる企業はほとんどいないでしょう。
ーーそうなんですね。専任の担当者を置くなどしないと対応が難しそうですね。
谷島: はい。ふつうの会社の担当者では想定できないケースも多いのが特定技能の制度です。これまでの在留資格よりも手続きが複雑です。
また、受け入れ後の運営を適切にやらないと、今後の受け入れが停止になるペナルティもあります。
ーー「受け入れ停止!?」強烈ですね….。また、制度を完全に理解して運用することは難しそうです。
谷島: 制度の複雑さは企業が特定技能の採用を躊躇してしまう理由の1つです。企業は、特定技能の細かいルールを完全に理解するよりは、私達のような専門家に任せるほうが結果的にコストパフォーマンスが良くなると思います。
継続的な受け入れ体制を持つためにも、登録支援機関に外部委託するか、アドバイザリーとして顧問契約の行政書士を置くなどがおすすめです。
(後編に続く)