特定技能人材には必要?生活オリエンテーションの目的と内容を解説
14種の職業を対象に、外国人労働者を日本国内に受け入れる仕組みが「特定技能制度」です。介護分野をはじめとして、特定技能制度は積極的に取り入れられてきています。
特定技能人材を雇用する際には、いくつかの特殊な手続き・対応などが必要になりますが、その中の一つが「生活オリエンテーション」です。
この記事では、特定技能1号人材の入国後に実施する、生活オリエンテーションについて解説していきます。
1.特定技能制度の生活オリエンテーションとは何をするの?
8時間以上かけて日本での生活の準備を入国後、特定技能1号人材がスムーズに生活環境や職場へとなじめるよう、受入れ先や専門機関が施す教育活動が「生活オリエンテーション」です。
生活オリエンテーションは8時間以上かけて行われ、日本の風習やマナー、必要不可欠な情報などを伝えていきます。生活オリエンテーションは外国人の不安を取り除くために、とても重要な場です。
どのようなことをするのか?
特定技能人材の生活全般に関わることを、生活オリエンテーションでは教えていきます。
公共の機関や施設の利用方法、ルールなどです。日本で迷惑とされている行為についての講習も行われます。さらに、住民票作成や保険加入など、細かい点までカバーして伝えているところも少なくありません。
生活オリエンテーションは必ず、対象の外国人が理解できる言語で行われます。寮で開催されることもあれば、実際に役所などまでスタッフが同行するやり方もあります。
義務化されている生活オリエンテーションについて
具体的な教育内容
生活オリエンテーションは、特定技能1号の人材を受け入れる先の義務です。
最低でも8時間以上の実施が定められているものの、原則として特定技能人材が内容を理解できるまで丁寧に教育することが大切です。
義務付けられている教育内容には、金融機関や医療機関の利用方法が含まれます。交通ルールや交通機関についても、教育を行いましょう。
生活ルール・マナーは当然として、必需品の購入方法を伝えるのも欠かせない義務ではないでしょうか。そのほか、緊急時の情報入手方法、日本での違法行為についても受け入れ先がしっかり伝えていきます。
報酬や労働条件についての確認もここで行います。
広範囲にオリエンテーションは及ぶ
社会保障や税金、マイナンバーなどの手続きには、在留し始めて間もない外国人が自力で行うのが難しいものもあるため、生活オリエンテーションでは、これらの手続きもサポートします。
さらに、受入れ企業は外国人が相談できる行政の窓口も紹介し、日常のトラブルにも対応できるよう導いてあげなくてはなりません。特定技能人材が働き始めてからも、受入れ先は3カ月に1回以上の面談を実施し、業務面だけでなく生活面についてもフォローしていきます。
2.任意で行う生活オリエンテーションについて
任意で行うことが推奨されている生活オリエンテーションもあります。
これは受入企業や業務、さらには環境によって大きく異なるので、一概に何を行っているかというのは一言では言えないという状況です。
日本の気候について、また季節ごとの対策まで案内する受入れ企業もあるそうです。
日本での生活で、「何がどれくらいかかるのか」といった費用感を伝えるところもあるでしょう。そのほか、入国前に必要なアイテムをまとめて教えるのも生活オリエンテーションの一環です。
金銭的支援は問題ないのか
任意的支援として、金銭を貸し付けている受入れ企業もあります。特定技能人材が来日するにあたり、金銭的な不安が障害になってしまうケースも考えられるからです。十分な渡航費や、生活品を揃える費用がない外国人もいるかもしれません。
そこで、受入れ先から必要な金額を貸して、働きながら返済してもらう流れにするのです。なお、その際の返済方法は、労働法令に違反しないようにすることが必須です。
これまで日本に住んでいた特定技能人材にも必要?
明らかに問題がなければ省略できる項目もある
技能実習2号等で働いていた在留外国人が特定技能1号へと資格を変更するとき、生活オリエンテーションの一部を実施する義務はなくなります。(銀行口座の開設や居住地の確保などは不要)。
生活オリエンテーションが不要なわけではない
ただ、「日本での在留期間が長い外国人には生活オリエンテーションが必要ない」ということではありません。
職場や住所が変われば、生活習慣にも何かかしらの影響があるはずです。行政関連の手続きも新たに発生します。
そもそも特定技能基準省令には「職業生活、日常生活、社会生活において、支援項目を計画に含めること」という旨が記載されています。彼らが日々感じる不安には継続して寄り添っていくべきだという考え方があり、これを踏まえれば、特定技能人材のキャリアに関係なく、生活オリエンテーションを行うことはとても重要ではないでしょうか。
3.生活オリエンテーションで特定技能人材をサポートしよう
来日直前、直後の特定技能人材はさまざまな不安を抱えている可能性が高く、生活オリエンテーションは特定技能人材が日本の生活になじむために大切な要素の一つです。
専門機関のサポートを借りて、特定技能人材の教育に努めるのも良いかもしれません。
受入企業の方は、ぜひ特定技能人材の悩みや不安に寄り添いながら、生活オリエンテーションを実施してみてください。