特定技能外国人を募集・採用する際に気をつけるべきこととは?行政書士が法律面から説明、例も挙げられます!➀
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十数年前までは、求人情報誌などで「パート従業員募集!元気で明るい40歳までの方」といった表現が数多く見られましたが、年齢に関わりなく均等に働く機会が与えられるようにすることを目的として雇用対策法が改正され、平成19年10月から、原則として、求人の年齢制限は禁止となりました。今回の記事では、法的面から特定技能外国人を募集・採用する際に気を付けるべきポイントの一つを紹介いたしす!
募集の際に年齢制限のダメな例と良い例
特定技能外国人を募集・採用する際に、会社には会社の事情があって、こういう人に会社に入ってほしいと思って求人を出すのですが、それを「年齢」で括ってはいけないというのです。
例えば、「年齢不問。35歳未満の方大歓迎」といった表現は、一見、年齢不問と書いておきながら、内容として35歳以上の人の応募を妨げているのでダメです。また、求人票は年齢不問としながらも、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定するのは法違反になります。
年齢を不問にすることで広く応募者を集め、業務内容と必要な能力などを明示することで応募者の精度が高まります。募集のダメな例と良い例を見てみましょう。
× ハードな重労働。高齢者には不向き。40歳以下で募集。
〇 長距離トラック運転手(年齢不問)
長距離トラックを運転して、札幌から大阪までを定期的に往復します。資材(30~40kg)を上げ下ろしする作業があるため、体力のある方を歓迎します。
事例:
重量物配送で体力を要するため、若い人の方が丈夫で頑張ってくれると思いましたが、なかなかいい人がいませんでした。欠員補充で急募だったこともあり、経験があり即戦力となるならと考え直し、複数の応募の中から経験が豊富にある50代の方を採用しました。体力には個人差があり、同業務の経験者であれば問題ないことを実感しています。
× 若者向けの洋服の販売スタッフのため30歳以下で募集。
〇 販売スタッフ(年齢不問)
主に20代をターゲットにした婦人服の接客販売業務です。お客様とコミュニケーションを取りながらコーディネートを提案していただきます。定期的に開催する販売イベントにも参画していただきます。
事例:
顧客の年齢層に合わせ、若年者の採用を想定していましたが、年齢不問求人としたため、幅広い年齢層から応募がありました。営業経験のある中高年の方を面接し、適性があると判断して採用しました。採用後は営業経験を生かした接客態度で評判がよく、トラブルにおいてもしっかり対応ができて、他の従業員から頼られる存在になっています。
× 社長が40代で従業員も30代以下。中高年齢者に入られると指導しづらいし社内で浮いてしまうので30代以下で募集。
〇 一般事務(年齢不問)
40代の社長が1年前に創業したベンチャー企業。総務部門において、担当責任者(30代)の指示のもと一般事務を担当していただきます。主な業務は、従業員の勤怠管理、社内文書の作成(ワード・エクセル)、備品・事務用品の管理です。
事例:
年上の人は何かと指導しづらいし、年齢の近い若い人の方が職場に活気が出ると考えていましたが、40代の人の応募があったため、面接で人柄なども考慮し、採用しました。年下の上司の指導を謙虚に聞き入れ、誠実に仕事に取り組む姿勢が他の従業員の刺激にもなっており、とても良い人材を採用できたと思っています。
年齢制限を行うことが認められる場合
以上のように、募集及び採用の際には、原則として年齢を不問とし、幅広く人材を求めるようにしなければなりませんが、例外的に年齢制限を行うことが認められる場合があります。
① 定年年齢を上限として、定年年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。
× 定年が62歳の会社が、契約期間が1年(更新あり)で、62歳未満の人を募集
× 定年が62歳の会社が60歳未満の人を募集
× 定年が62歳の会社が40歳以上62歳未満の人を募集
② 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合。
〇 18歳以上の人を募集(警備業法第14条の警備業務)
③ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。
・「若年者等」とは、基本的に35歳未満だが、おおむね45歳未満までなら可
・職業経験について不問、新卒者以外の者については新卒者と同等の処遇が要件
〇 40歳未満の人を募集(要普通自動車免許)
※ 取得するのに実務経験が必要ない免許資格なら条件をつけてもよい。
× 30歳未満の人を募集(契約期間1年。更新あり)
× 40歳未満の人を募集(1級建築士(免許登録に実務経験が必要な資格)保持者)
④ 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。
・「特定の年齢層」とは、30~49歳のうちの特定の5~10歳幅の年齢層
・「相当程度少ない」とは、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して労働者数が2分の1以下
× システムエンジニアとして25~34歳の人を募集
× システムエンジニアとして35~49歳の人を募集
× 電気通信技術者として30~39歳の人を募集(この会社の電気通信技術者は、20~29歳20人、30から39歳10人、40~49歳15人)
⑤ 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合。
× イベントコンパニオンとして30歳以下の人を募集
⑥ 60歳以上の高年齢者、又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合。
〇 (人材開発支援助成金の対象者として)15歳以上45歳未満の人を募集
まとめ
特定技能外国人を募集・採用する際に気をつけるべきこととして、年齢制限の禁止が挙げられます。日本の労働法では、年齢に基づく差別を厳しく禁止しており、特定技能外国人の採用プロセスにおいても年齢を理由にした差別は違法です。採用においては個々の能力や経験を公平に評価し、適切な人材選定を行うことが大切です。
企業は、年齢を重視するのではなく、多様な人材を活用することで、企業の成長に貢献できる可能性を広げることができます。特定技能外国人を採用する際には、年齢制限を意識せず、能力主義を重視する姿勢を持つことが求められます。法律遵守と公正な採用プロセスを確保し、多様な人材の活用によって企業の競争力向上を目指すことが重要です。次回は他の重要なポイントを紹介いたしますので、お楽しみください。