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使用者と労働者の約束事3 ~特定技能労働契約を知ろう~

【労働契約シリーズ】

記事URL:使用者と労働者の約束事1 ~特定技能労働契約を知ろう~

記事URL:使用者と労働者の約束事2 ~特定技能労働契約を知ろう~

労働契約が終わるとは勤めていた仕事を辞めるということです。労働者が自分の意思で辞める場合もあれば、会社の都合で辞めさせられる場合もあるでしょう。初めから決まっていた期間の仕事が終わったから辞めるということもあるでしょうし、何回か労働契約を更新した後に辞めるということもあるでしょう。今回は、労働契約の終了について、いくつかのパターンに分けて説明します。

特定技能労働者から労働契約を終了する場合

労働者からの申し出によって労働契約を終了することを自己都合退職といいます。

会社を退職する場合には、退職の意思を上司に伝え、退職届を提出し、仕事の引継ぎをするなど社内の手続きを踏み、できるだけ職場に迷惑がかからないようにして辞めることが大切です。

一般的に、就業規則には「退職する場合は退職予定日の1か月前までに申し出ること」などと定めている会社が多いので、辞めることを考えたときには、就業規則を調べて退職の規定を確認します。

また、契約期間の定めがある労働契約を結んでいた場合と、そうでない場合とでは、法律上異なったルールが定められています。

正社員などのように、あらかじめ契約期間が決まっていない場合(無期労働契約)、労働者は少なくとも2週間前までに退職の申し出をすれば、法律上は問題なく辞めることができます(民法第627条)。
ただし、法律というのは最低限のことが書いてあるだけなので、会社の就業規則に退職手続きや引継ぎについて詳しく書かれている場合にはそれに従って辞める手続きを踏みます。

一方、アルバイト、パートタイマー、契約社員などでよく見られるように、3か月や6か月など契約期間が決まっている場合(有期労働契約)は、契約期間の途中で退職することはできません。契約期間が決まっていることを承知の上で労働契約を結んだということは、契約期間を全うすることを約束したという意味があるのです。したがって、契約途中で辞めるのは契約違反になります。急なケガなどで働けなくなった等、やむを得ない事情が生じた場合には、会社に相談しましょう。

使用者から労働契約を終了する場合

解雇できない・認められない場合

解雇とは、「クビにする」とか「クビを切る」といった表現を使うことがありますが、使用者が一方的に労働契約を終了させることをいいます。
労働基準法やその他の法令では、使用者が労働者を解雇してはならない場合が規定されています。

解雇が禁止されている主な場合

・業務上のけがや病気による休業期間及びその後30日以内の解雇(労働基準法第19条)
・産前産後の休業期間及びその後30日以内の解雇(労働基準法第19条)
・労働基準監督署に会社の法違反を知らせたり、相談しに行ったことを理由とする解雇(労働基準法第104条)
・正社員とほとんど同じ仕事をしているパートタイム労働者について、パートタイム労働者であることを理由とする解雇(パートタイム労働法第8条)
・社員が一人で会社と闘うときに社員を助けてくれる制度を利用したことを理由とする解雇(個別労働関係紛争解決促進法第4条、第5条)
・女性(男性)であること、女性が結婚したこと、妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業をしたこと等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第6条、第9条)
・育児・介護休業を取りたいと言ったこと、育児・介護休業を取ったことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条)
・労働組合の組合員であることを理由とする解雇(労働組合法第7条)
・生まれた国、宗教などの考え方、家柄や身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
・労働者が会社の不正などを警察などに知らせたことを理由とする解雇(公益通報者保護法第3条)

これらに該当しない場合であっても、筋の通らない理由で、普通の人が納得できないような解雇は、会社の都合を押し付けたものと判断されて、無効となります(労働契約法第16条)。

解雇の予告

使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前には本人に対して予告しなければならないことになっています(労働基準法第20条)。ただし、その予告が間に合わない場合は、30日に足りない日数分のお金を支払えばよいとされています。これを解雇予告手当といい、例えば、解雇の10日前に予告をする場合は20日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。解雇予告手当の一日分の金額は、その前の3か月間の賃金を3か月の日数で割った金額で、これを平均賃金といいます(労働基準法第12条)。

ただし、例外的に、以下の労働者を解雇する場合は30日前の解雇予告が必要ありません(労働基準法第21条)。

・一日ごとに雇い入れられる人(1か月以上続けて雇われた場合は解雇予告が必要)
・2か月以内の期間を定めて雇われる人(労働契約を1度でも更新した場合は解雇予告が必要)
・清酒の醸造、製茶、製氷などの季節的業務に4か月以内の期間を定めて雇われる人(労働契約を1度でも更新した場合は解雇予告が必要)
・試用期間に入って14日以内の人

期間の定めがある労働契約の終了

期間の定めがある労働契約(有期労働契約)では、その契約期間中に労働者を解雇することは大体不可能です。もし、使用者がどうしても解雇したいと思って解雇し、労働者がその解雇は無効だとして裁判に訴えた場合、大抵は解雇無効と判断されます。解雇が有効だと判断される可能性は、期間の定めのない労働契約での解雇よりも低いです。

有期労働契約は、使用者が契約を更新しないと決めたとき、契約期間の最終日に終了します。これを「雇止め」といいます。雇止めは、使用者の一方的な決定でされるものですが、使用者の都合で勝手にはできません。例えば、更新が何回も繰り返し行われていて、事実上、期間の定めのない契約と同じ場合や、更新がそれまでずっと自動的に行われていて当然今回も更新されるはずだと思われていた場合に雇止めされたら、その雇止めは使用者の都合を優先した勝手すぎる行為だと判断されます。

このように裁判で判断された場合には、雇止めは無効とされ、それまでと同じ労働条件で有期労働契約が更新されます。

逆に、以下のような特徴のある雇止めの裁判では、雇止めの効力が認められることが多いです。

・業務内容が臨時的なもので、臨時社員など契約上の地位が臨時的な場合。
・契約当事者である使用者と労働者がともに期間満了で契約関係が終了するとはっきり認識している場合。
・労働契約の更新の手続きが形式的なものではなく、更新の基準や状況の説明が行われ、お互いに納得して更新されている場合。
・業務の内容、範囲、責任の重さなどが同じくらいの労働者について、過去に雇止めの例がある場合。

裁判はその一件一件が個別に判断されるもので、全く同じ裁判が複数存在することはありません。したがって、結果はやってみなければ分かりません。しかし、そうはいっても、裁判官が訴えの内容を細かい事実に分けて整理して考えるときに、どんな点を重視するかには傾向があって、その傾向にはまる、つまり似たような訴えが他で起きた場合、裁判の結果も似たようなものになります。言い方を換えれば、裁判の結果はある程度予測することができ、いちいち裁判にしなくても認められるか認められないかが大体分かることが多いのです。

裁判にはそれなりの時間とお金がかかり、結果がどうであれ、使用者側に経済的なメリットはありませんから、会社としてはやりたくないことです。労働契約を無難に終了させるには、適正な契約書を作り、適切に契約を締結し、契約期間中は契約内容を守り、更新する場合には正しい手続きを踏み、終了する場合には落ち着いて話し合うことが大切です。


水本 智

雇用契約書、就業規則などの整備を中心とした労務トラブル回避型の社会保険労務士。東京都社会保険労務士会所属。

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