外食業で働く外国人が持つ在留資格の比較
- 外国人採用
日本に住む外国籍の方は、それぞれ「在留資格」を持っています。「在留資格」は、外国人の方が日本に在留するための資格です。
「在留資格」は、様々な種類があり、その種類ごとに取得条件や外国人の方が日本で行える活動が制限されるので、それぞれの在留資格の特徴を把握しておくことが重要です。
日本の企業で外国人の労働者を雇用する場合、職務内容に応じた在留資格を雇用する人材が保有している必要があります。
その中でも、外食業で受入れる外国人が持つ在留資格は、主に「留学」「特定技能 (1号)」「技能」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」の5つです。
この記事では、上記5つの在留資格を比較し、おさえておきたいポイントを簡単に解説していきます。
参考サイト:
出入国在留管理庁『在留資格一覧表(令和元年11月現在)』
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.pdf
在留資格の種類と概要
外食業で受け入れる外国人が持つ5つの在留資格、「留学」「特定技能 (1号)」「技能」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」の概要を説明します。
1. 留学
在留資格「留学」は、日本の大学・大学院・短期大学・専修学校・日本語教育機関などで教育を受ける外国人が対象の在留資格です。
在留期間は、4年3カ月、4年、3年3カ月、3年、2年3カ月、2年、1年3ヵ月、1年、6ヵ月、又は3ヵ月のいずれかです。
外食企業では、在留資格「留学」を保有する外国人をアルバイトとして雇用することができます。
在留資格「留学」で在留中の外国人は勉強することを一番の目的として日本に来ているため、アルバイトを行うためには「資格外活動許可」の申請を行う必要があります。許可が下りれば、日本でアルバイトを行うことが可能です。
「資格外活動許可」には2種類ありますが、留学生は基本的に「包括許可」を申請することになります。
「包括許可」は、単純労働が認められており、留学生の場合、学校の授業のある期間は週28時間以内、長期休業期間は時間制限なしで働くことができます。
2. 特定技能 (1号)
在留資格「特定技能 (1号)」は、一定の専門性・技能を既に持ち合わせ、即戦力として働くことができる外国人を受け入れるための在留資格です。
在留期間は、1年、6ヵ月、又は4ヵ月です。
2019年4月より導入された新しい制度で、外食業や建設業などをはじめとした人手不足の課題を抱える分野を対象としています。
在留資格「特定技能 (1号)」の導入以前は、外食業などで外国人を店舗の現場スタッフとして採用したい場合、労働時間が週28hに限定されたアルバイトとしてしか留学生を採用できませんでした。
今回の在留資格「特定技能」の導入により、日本人のフルタイムで働くスタッフと同じ時間働ける利点があります。
3. 技能
在留資格「技能」は、日本企業と契約することで、産業上の特殊な分野において、熟練した技能を必要とする活動ができる資格のことです。
例えば、外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属の加工職人などが該当します。
注意点としては、「熟練した技能を必要とする活動」であることが条件のため、フルコースのない小規模レストランや、専門性を必要としない産業は対象外となってしまいます。
在留期間は、5年、3年、1年、又は3カ月です。
4. 技術・人文知識・国際業務
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の受入れ機関と契約することで、
1) 理学・工学などの自然科学の分野における技術・知識が必要な活動(例. 機械工学の技術者、エンジニア)
2) 法律学・経済学・社会学などの人文科学の分野における技術・知識が必要な活動(例. 企画、営業、事務職)
3) 外国の文化に関する思考や感受性を必要とする活動(例. 英会話学校の語学教師、通訳・翻訳)
ができる資格のことです。
在留期間は、5年、3年、1年、又は3ヵ月のいずれかです。
外食企業では 2)に関わる業務を担当することができます。
在留資格取得の注意点としては、外国人が就職する前の大学や専門学校に通っている間の素行も在留資格取得の審査対象となることです。
例えば、大学や専門学校に在学中の外国人は在留資格「留学」を保有していますが、
・週28時間以内とされているアルバイトの規則を破る
・1年以上継続して200時間以上アルバイトをする
などといった外国人は、ビザ申請が不許可となってしまいます。
5. 技能実習
在留資格「技能実習」は、「技能実習生」に与えられる資格です。
「技能実習生」とは、日本の企業などで技術や技能を身につけるために日本に来ている外国人のことであり、技能実習生を受入れるための制度を「外国人技能実習制度」と言います。
「外国人技能実習制度」は、開発途上の外国人に日本の技術や知識を身につけてもらい、母国に帰った後に日本で身につけたスキルを役立ててもらうという趣旨の制度です。
以前は技能実習生の労働環境が問題視されていましたが、現在では制度の見直しが行われ、新たに技能実習法とその関連法令が制定されています。
外食企業では、事業所が「外国人技能実習制度」の許可職種である「医療・福祉施設給食製造」に該当する場合に「技能実習生」として受入れが可能です。
5つの在留資格の比較
5つの在留資格に関して、1) 該当職種、2) 給与水準、3) 就労時間、4) 最大滞在年数、5) 技術・技能要件、6) 学歴要件、7) 日本語能力要件、8) 家族帯同の有無を比較してみましょう。
比較表
留学 | 特定技能 (1号) | 技能 | 技術・人文知識・国際業務 | 技能実習 | |
1) 該当職種 | 規定なし (例. コンビニ) | 次の14業務分野 1. 介護 2. ビルクリーニング 3. 素形材産業 4. 産業機械製造業分野 5. 電気・電子情報関連産業 6. 建設 7. 造船・舶用工業 8. 自動車整備 9. 航空 10. 宿泊 11. 農業 12. 漁業 13. 飲食料品製造 14. 外食業 | ・調理師 ・ソムリエ ・建築技術者 ・外国特有製品の製造や修理 ・宝石や貴金属、毛皮の加工 ・動物の調教師 ・石油・地熱等掘削、調査技術者 ・パイロット ・スポーツ指導者 | ・機械工学者等の技術者 ・通訳 ・翻訳 ・デザイナー ・私企業の語学教師 など | 1 農業関係(2職種6作業)2 漁業関係(2職種9作業) 3 建設関係(22職種33作業) 4 食品製造関係(11職種16作業) 5 繊維・衣服関係(13職種22作業) 6 機械・金属関係(15職種29作業) 7 その他(16職種28作業) |
2) 給与水準 | 最低賃金法・労働基準法の通り | 日本人の報酬と同等額以上 | 日本人の報酬と同等額以上 | 日本人の報酬と同等額以上 | 日本人の報酬と同等額以上 |
3) 就労時間 | 学期中: 週28時間以内 長期休業期間: 制限なし | 制限なし | 制限なし | 制限なし | 制限なし |
4) 最大滞在年数 | 在学期間 | 5年 | 5年 (更新可能) | 5年 (更新可能) | 5年 |
5) 技術・技能要件 | 不要 | 技能測定試験に合格すること | 産業上の特殊な分野に属する熟練した技能 (原則10年以上の実務経験) | 不要 | 不要 |
6) 学歴要件 | 不要 | 不要 | 不要 | 大学卒業、または日本の専修学校の専門課程を修了。 | 不要 |
7) 日本語能力要件 | 不要 | JLPT N4以上 | 不要 | 不要 | 原則JLPT N4 程度 |
8) 家族帯同 | 不可 | 原則不可 | 可能 | 可能 (親を除く) | 不可 |
表の通り、在留資格によって各項目の要件が異なります。外国人を雇用する際には、その方の在留資格に該当する職種や滞在年数、日本語能力要件などをしっかりと把握することが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「留学」「特定技能 (1号)」「技能」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」の5つの在留資格に関して、それぞれの特徴や在留資格の違いがお分かりいただけたかと思います。
外国人を雇用する際には、その方の在留資格の主な内容を必ず確認しましょう。