特定技能1号(介護)から永住権を取得する具体的な方法とは?
ここ数年、在留日本外国人は増加傾向であり、永住権を取得して日本に長く住みたい方もますます増えています。介護分野で特定技能ビザを取得している外国人の中にも、永住権に興味を持つ方もいるのではないでしょうか。今回は、日本の永住権を取得する条件をおさらいし、特定技能1号(介護)から永住権を取得するルートを解説していきます。
特定技能制度の概要
特定技能制度とは、国内で人材を確保するのが困難な産業において、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れる制度です。特定技能1号と特定技能2号の2種類があり、受入分野が大きな違いです。それぞれの在留資格で受け入れ可能な分野は下記の通りです。
【特定技能1号】
・介護
・ビルクリーニング
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気、電子情報関連産業
・建設
・造船、舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
【特定技能2号】
・建設分野
・造船、舶用工業分野
また、特定技能1号の在留期間は1年、半年または4ヶ月ごとの更新制となっており、上限は通算で5年です。家族の帯同は基本的に認められません。
その一方で、特定技能2号の在留期間は3年、1年または半年ごとの更新制となっており、上限は設定されていません。家族の帯同は要件を満たすと認められます。
外国人が日本で永住権を取得する条件
特定技能制度における外国人の永住権を考える前に、そもそも外国人が日本で永住権を取得する条件を確認してみましょう。
出入国在留管理庁では、永住許可に関するガイドラインを設定しています。ガイドラインによると永住の許可を受けるための法律要件は主に下記の通りです。
①法律を守ることを前提として住民として社会的に非難されない生活を営んでいる
➁資産・技能などをふまえると将来的に公共の負担にならない安定した生活が見込まれる
➂永住が日本国の利益につながることが認められる
➂に関しては、さらに細かく具体的な条件が記載されています。
“原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。”
特定技能1号による在留期間が対象となっていない点は、特定技能制度の永住権を理解するうえで見過ごせないポイントです。
永住者あるいは特別永住者の配偶者・子に関しては①と➁の条件を満たす必要はありません。また、難民の認定を受けている場合も➁の条件を満たさなくて問題ありません。
特定技能で永住権は取得できるのか?
特定技能制度では、在留期間に更新や上限がありましたが、果たして永住権を取得できるのでしょうか。特定技能1号と特定技能2号にわけて永住権取得の可否を確認していきます。
特定技能1号は取得が難しい
出入国在留管理庁による「特定技能制度に関するQ&A」では、特定技能の永住権に関する可否について言及されています。
‟Q 10 「特定技能」の在留資格から,永住許可は認められますか。
【A】「特定技能1号」の在留資格で日本にいる期間は,最長5年です。そのため,「永住者」の在留資格へ変更することは難しいです。”
特定技能1号の在留資格に関しては、永住者の在留資格に変更するのが難しいと明かされています。ただし、不可能だとは明言されていません。
特定技能2号は永住権の条件を満たせる
特定技能2号は特定技能1号とは違って、更新が無期限とされている在留資格であり、就労先が存在すれば日本に在留し続けられます。
したがって特定技能2号を取得すれば、日本の永住権を獲得するための条件(10年間の在留期間)を達成できる可能性があります。
ただし、特定技能2号で受け入れられる業種は現状少ないです。介護分野も含まれておらず、介護職で働く外国人の方が特定技能2号で永住権を取得することはできません。
特定技能1号(介護)から永住権を取得する具体的なルート
介護分野は特定技能1号に該当する一方で、特定技能1号では在留期間の要件を満たせず、永住が難しいことがわかりました。しかし実は、特定技能1号(介護)の在留資格を持つ方が永住権を取得するルートは存在しています。具体的な永住権を取得できる方法を確認してみましょう。
特定技能1号から在留資格「介護」に移行する
特定技能1号では、在留期間の上限に達すると帰国をしなければなりませんが、制限がない在留資格に移行すれば永住できる可能性があります。
具体的には在留資格「介護」に切り替える方法が代表的です。
在留資格「介護」は2017年9月から介護業界の人材不足を解消するために認められた介護職専用の在留資格として知られています。
本人が希望する限り繰り返し更新可能であり、永続的な雇用を実現可能です。配偶者と子は家族滞在のビザを申請できるうえに、資格外活動許可を受ければ、原則として1週間のうち28時間以内ならば就労できます。
通常は留学の在留資格で入国してから、介護福祉士養成学校で2年以上学習し、介護福祉士の資格を取得したあと、在留資格「介護」に切り替えます。
しかし政府は、特定技能1号から在留資格「介護」への移行を認める方針を打ち出しました。
”外国人労働者の受け入れ拡大をめぐり、新たな在留資格「特定技能1号」で介護の仕事を3年以上続けた後に介護福祉士の資格を取れば、既存の在留資格「介護」に移行できることが明らかになった。”
引用:「特定技能1号」の外国人、在留資格「介護」へ移行可能(朝日新聞DIGITAL)
いずれにせよ、在留資格「介護」を取得するには、介護福祉士の国家取得が必要です。したがって、特定技能1号から移行するには、特定技能で働ける期間に介護福祉士を取得する必要があります。
ちなみに、介護福祉士登録証が交付されるタイミングは、介護福祉士国家試験に合格した年の翌年度4月1日以降です。
永住許可申請の方法
永住許可は本人や代理人、取次者などが申請できます。手続対象者は永住者の在留資格に変更したい外国人や、出生等によって永住者の在留資格を取得したい外国人です。
永住者の在留資格に変更したい場合、在留期間の満了日以前に申請をしなければなりません。必要書類は申請書や写真、立証資料、在留カードなどであり、永住許可の手数料は8,000円です。申請書には、氏名や生年月日、国籍などのほかに、永住許可を申請する理由や現在の在留資格の名称、在留期間などの記載が求められます。
申請先については、住宅地を管轄している地方出入国在留管理官署あるいは外国人在留総合インフォメーションセンターに問い合わせる必要があります。手続き処理にかかる期間は標準で4ヶ月です。
永住許可申請(出入国在留管理庁)まとめ
以上、特定技能制度と永住権の概要にはじまり、特定技能1号から永住権を取得するプロセスについて解説しました。
永住権の取得が難しいとされる特定技能1号でも、永住権を取得できる抜け道があることを知って驚いた方もいたのではないでしょうか。
特定技能1号から永住権を取得するプロセスでは、介護福祉士の資格を必然的に取得する必要がありました。見方を変えれば、外国人材の介護スキル向上につながるルートだといえるでしょう。
このように、外国人材の受け入れに関する国の制度は柔軟に整備されつつあります。一定のスキルを有した外国人材を長期的に雇用したい方は、受入プロセスの動向について日頃からリサーチするように心がけておくとよいでしょう。